クラシック、オペラの粋を極める!

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思い出の「ローマの松」

 先日の東フィル定期公演で聞いたローマ三部作。特に「ローマの松」は、多くの管弦楽曲の中でも大好きな曲の一つである。
 私に限らず、この曲が好きな人、多いのではないだろうか。アッピア街道の松、カッコイイもんね。ゾクゾクするよね。
 
さて、私が初めて生で鑑賞した「ローマの松」の演奏、どこのオーケストラだったと思います?
 
 
へっへっへ。すげえだろー(笑)。
(むかついた皆さん、ごめんちゃい。)
 
 今日はこの公演のチケット入手にまつわる当時の思い出話について書こうと思う。この秋のベルリン・フィル公演のチケット一般発売ももうすぐだしね。
 
 そもそも私がレスピーギの「ローマの松」にめぐり逢ったのは、高校1年か2年の頃。カラヤン指揮ベルリン・フィルのレコードだった。ゴージャスさにおいて右に出るものはないカラヤンベルリン・フィル。すっかりこの演奏の虜になってしまい、何度も繰り返し聴いてはビリビリと痺れていたことをよく覚えている。
(クラシック初心者だった当時の私は、どのレコードを買おうか迷った際には、カラヤンベルリン・フィルを選択するようにしていた。レコード店の店員に「それが無難かつ最善の選択」と教えられていたからだ。)
 
 大学2年生の時の1984年10月、そのカラヤンベルリン・フィルが日本にやってきた。
 
 ベルリン・フィルの来日公演は、その前にも一度行ったことがある。中学1年の時。もちろん自らの意思によるものではなく、単に親に連れて行かれただけだ。 
 成長し、既にクラシック音楽に相当のめり込んでいた二十歳の私は、ここで初めて自らの意志で、自らのお小遣いでベルリン・フィル公演に行こうと決意した。
 
この時の東京公演の概要は次のとおり。
10月21日  東京文化会館
モーツァルト:ディヴェルティメント変ロ長調、R・シュトラウスドン・ファンレスピーギ:ローマの松
10月22日  普門館
ベートーヴェン交響曲第6番田園、交響曲第5番
10月23日  普門館
ブラームス交響曲第3番、交響曲第1番
10月24日  普門館
ドビュッシー交響詩海、牧神の午後への前奏曲ラヴェル:ダフニスとクロエ第二組曲
 
 今こうやって眺めてみると、全部行きたいくらい魅力的なプログラムだが、貧乏学生なので行けるのは1公演のみ。選んだのはローマの松をメインとする21日の公演だ。大好きなローマの松。レコードで慣れ親しみ、何度も繰り返し聴いたベルリン・フィルの演奏。しかも、この公演だけが東京文化会館だった。(普門館の音響は良くないが、キャパシティの問題でこの会場になったという真実を私は知っていた。)
 
 狙いは定まった。席のランクはもちろん最低のD席8千円。
 
 さて、今から30年も昔のことである。ネット予約なんか想像もつかない時代。チケットはどうやって販売されるか。
 方法は2つ。電話で申し込むか、もしくは販売所であるプレイガイドに直接購入に出向く。電話では運を天に任せるしかない。私はプレイガイドでの直接購入に賭けた。入手出来るかどうかは、どれだけ早く並ぶかにかかってくる。出向いたのは上野松坂屋のプレイガイド。ここが埼玉の自宅から一番近かった。
 
 迷ったのは、徹夜すべきかどうか、徹夜が必要なのかどうかとういうこと。大変なので、そりゃ出来ればしたくない。
 とりあえず、発売前夜(確か午後9時頃だったと思う)、松坂屋に行ってみた。並んでいる人は誰もいなかった。この時点でズラッと並んでいたら、ひっくり返るところだった。ひとまず安堵して帰宅。
 翌朝、私は始発電車で再び上野に向かった。午前6時前に松坂屋に到着すると、私の前に4人の人が並んでいた。私は5番目だった。ホッとした。「よし、取れる」と思った。
 
 見知らぬ同士、チケット争奪戦に参戦したライバル同士だったが、発売開始まで時間がたっぷりあったこともあり、誰からともなく声を掛け、話をした。次第に打ち解け、それぞれの音楽愛好歴やベルリン・フィルの魅力などについて語り合った。また、今回どの公演に行くつもりなのか、どのチケットを狙っているのかについてもお互い申告し合った。私が狙っていた21日のD席の希望者は、とりあえず私の前に並んだ人の中にはいなかった。しめしめと思った。
 
 発売開始30分前になると、列が膨らんで、後ろに30人くらいズラッと並んでいた。ただ、後ろに何人並ぼうがどうでも良かった。自分が買えるかどうか、それだけが問題だった。
 
 ここでプレイガイドの販売担当者が登場。この日発売するチケット枚数(公演日ごと、席種ごと)が発表された。ジャジャーン!
 
 絶句してしまった。私が狙っていた公演の割り当て枚数はビックリするくらい僅少だった。なんと、D席は「たったの1枚」だけだった。ええっ!たった1枚!?うっそー!?
 緊張感が襲ってきた。胸がドキドキした。もし私の前に並んだ4人のうち、誰かがこの一枚を奪ってしまったら・・・。
 席のカテゴリーランクを上げて買うほどの所持金の余裕は無し。その場合、私の希望は儚くも砕け散り、他の普門館の公演への変更を余儀なくされる。
 
「1枚のみ」とか言われると、ついそれが欲しくなってしまうものだ。案の定、私の前に並んでいた4人のうちサラリーマン風の1人が、「うーん、やっぱり21日のD券も欲しいなあ」と呟いた。ピンチ!
 
 すると、それを聞いた年配の男性(一番に並んだ人)がその人をたしなめた。
「いや、せっかく彼(私のこと)がそのチケットのためにこうして並んだんだからさ、それは彼に譲ってあげようよ。学生さんなんだからさ。」
 呟いた男性もすぐに「確かにそうですね。」と思い直してくれた。
 
 おお!ありがとう!
 こうして、私はたった一枚のプラチナチケットをゲットした。(30年経った今も、私はこの人の顔を思い出すことが出来る。)
 
 
 私はいつもチケットを公演後すぐに捨ててしまう。単なる紙だと思っているから。
 だが、この歴史的な公演については、チケットをプログラムに挟んで保管してある。苦労して手に入れたもんなあ、うんうん。
 
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 公演の感想については、いつかまたの機会に。