2026年9月19日 東京交響楽団 サントリーホール
《創立80周年記念》
指揮 ロレンツォ・ヴィオッティ
合唱 東響コーラス
マキシミリアン・シュミット(テノール)、フランツ・ヨーゼフ・ゼーリヒ(バス)、クリスティーナ・ランツハマー(ソプラノ)、カトリオーナ・モリソン(メゾ・ソプラノ)、パトリック・グラール(テノール)、クレシミル・ストラジャナッツ(バス)、大木麻理(オルガン)
シュミット オラトリオ 7つの封印の書
完売の公演である。
なんとまあ、びっくりだ。レアでマニアックな「7つの封印の書」が完売だなんて・・・。
これは、東響の創立80周年記念の御祝儀であると同時に、今年から音楽監督に就任し、始まったばかりだというのに早くも契約延長したL・ヴィオッティへの期待の表れであろう。
更には、期せずして演奏の機会と時期を共にすることとなったN響との実質的なコラボレーションが大きな話題となり、売上の貢献に結び付いたのも、厳然たる事実かと思う。
バッティングが判明した時は、もしかして事務局は一瞬青ざめ、心の中で「マズイな・・」と思ったのではあるまいか。
せっかくの記念公演だというのに注目が分散されてしまうのではないか、老舗であるN響の方にお客さんを奪われてしまうのではないか、辛辣な比較にさらされてしまうのではないか・・・。
でも、そんなことは杞憂だった。
上記のとおり、逆に話題になった。2つのオーケストラが揃って「一緒に盛り上げていきましょうよ」と機運を高めた。団員、合唱団の方々も、「負けられない。頑張るぞ!」と燃えた。
かくして、ボルテージは沸騰した。
いいじゃないか、最高じゃんか!!
N響のF・ルイージが「創立100年特別企画」で満を持してこの作品を取り上げたように、東響のL・ヴィオッティだって「創立80周年」「新音楽監督」として、この作品で渾身の勝負に打って出た。
なんでも、20歳の時(16年前)にウィーン楽友協会合唱団に所属し、アーノンクールの指揮でこの作品を歌ったことがあるのだとか。
この貴重な体験は、ある意味ヴィオッティの原点と言えるのかもしれないし、今回指揮をするにあたっての音楽的なベースになっているのかもしれない。
そんなことを想像するだけで、聴く側としてはワクワクするではないか!
だが、ヴィオッティ自身は、不思議なくらいに気負いや力みが無い。
今回に限らずだが、ヴィオッティのタクトはいつも繊細で、音を柔らかく包み込む。もちろん、力強い箇所ではダイナミックだが、決して肩肘張らない。
そんなヴィオッティらしい演奏が、サントリーホールの豊かな音響と合わさりながら、極上の音楽、超然の宇宙が形成された。
思わず比較してしまうことをお許しいただきたいが、印象としては、ルイージが作った音楽が教会の壮麗な装飾様式だとしたら、ヴィオッティは、同じ壮麗さを鮮やかな光とともに絵画に落とし込んだ筆使いのようだと感じた。(決して優劣や、好みによる良し悪しの問題ではないし、そのように片付けるつもりもない)
ソリストの歌唱も惚れ惚れするくらい優美。あたかも、この演奏のために、この作品のために、世界から連れてきたかのような人選。
話によると、M・シュミット、C・ランツハマー、C・モリソン、P・グラールの4人は、今年5月にハンブルクで開催されたNDRエルプ・フィル公演の「7つの封印の書」(指揮:M・ホーネック)に既に出演していたらしい。日本に来た時点で、もう出来上がっていたわけだね。
そして、極めつけが東響コーラスの暗譜斉唱!
別に、暗譜することが良いとは限らないし、必要性の議論は不毛だし、演奏の出来ではなく暗譜そのものに目を向けることは、まあどうかとは思う。
それでも、それだけ練習し、作品について深く学び、完璧になるまで身体に染み込ませた賜物ではないか。アマチュアとしての厳しい評価を下す人もいるかもしれないが、私なんかは十分なレベルだったと思うし、率直に良かった。