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2024/4/13 東京・春・音楽祭(合唱の芸術シリーズ)

2024年4月13日  東京・春・音楽祭   東京文化会館
《合唱の芸術シリーズ Vol.11》
指揮  ローター・ケーニヒス
管弦楽  東京都交響楽団
合唱  東京オペラシンガーズ
ハンナ・エリザベス・ミュラー(ソプラノ)、オッカ・フォン・デア・ダメラウ(メゾ・ソプラノ)、ヴィンセント・ヴォルフシュタイナー(テノール)、アイン・アンガー(バス)
ワーグナー  ジークフリート牧歌
ブルックナー  ミサ曲第3番

 

以下の感想記は、ブルックナーに限ってということで。(ワーグナーについては省略)

今年は生誕200年記念ということで、各オーケストラが競うかのように彼の交響曲をシーズン中のプログラムに組み込んでいるが、こういう作品をピックアップしてくれるのが嬉しい。こういう作品こそ、記念年に相応しい。
なぜなら、ブルックナーという作曲家の理解を深めようとする時、敬虔なキリスト教信者で、教会のオルガニストだった彼の宗教曲は、重要な位置付けとされるからだ。

さすが、目の付け所が違うね、東京・春・音楽祭。

そして、この演奏のために海外から一流ソリスト歌手を揃えてきたというのも、ポイント。
ハンナ・エリザベス・ミュラーとアイン・アンガーの二人は、おそらくこの1公演だけのための来日だと思う。なんとまあ、贅沢。

あ、指揮者のケーニヒスもそうだね。お疲れ様です。

そのケーニヒスの音楽。
タクトを見、音楽を聴いて、「あ、熟知しているな」と感じた。

この「熟知」には2つの意味があって、一つは作品そのものをきちんと理解しているということ。
もう一つは、こうした合唱付き宗教曲の構築の仕方、響かせ方を把握しているということ。

「そんなの指揮者なんだから当然じゃないか」という指摘もあるかもしれないが、「いや、違う」と思う。指揮者にだって、得手不得手がある。
なんというか、手慣れているというか、染み付いているというか・・。
頻繁に演奏されない作品のはずなのに。

タクトそのものはオーソドックスで派手さはないが、手の動きは単なるテンポの刻みや運びでなく、導入、造形、表現に集約されている。
音楽の筋が通っていて、誇張、誇大化せず、透明な響きを基本にした、清らかでまっすぐな演奏だ。
合唱曲の扱い方が上手いのは、ウェルシュ・ナショナル・オペラの音楽監督を務めた経験が物を言っているのかもしれない。


本公演のサブ・タイトルが「合唱の芸術シリーズ」というとおり、演奏上、重要な役割を占めていたのが東京オペラシンガーズの合唱だったが、これがまた素晴らしかった。実に感動的であった。
響きが徹頭徹尾美しい。発声もクリアかつ滑らかで、迫力も十分。日本人による演奏団体がこれを成し遂げたのである。ドイツ人指揮者も十分に満足したのではないだろうか。
(我々からしてみれば、実力に定評がある東京オペラシンガーズの成果に、何の不思議もない。)


一方で、ソリストについては、大したコメントはできない。
そもそも、作品の中にアリアのような聴かせどころがほとんど無く、個々としてはあまり目立たない。彼らは、ひたすらミサ曲の演奏を構成し、支える一パートでしかないのだ。
そうした作品に対する献身性ということなら、十分に役目を務めたと言えるかもしれない。


さて・・・。
本日はダブルヘッダー。しばしの休憩の後、文化会館小ホールに移動して、同じく音楽祭の室内楽を鑑賞する。