1988年8月17日 スイス祝祭管弦楽団(ルツェルン音楽祭) クンストホール
指揮 ウラディーミル・アシュケナージ
マレイ・ペライア(ピアノ)
ハイドン 交響曲第88番
シューマン ピアノ協奏曲
ラヴェル 組曲「マ・メール・ロワ」
ストラヴィンスキー 組曲「火の鳥」
伝統のルツェルン音楽祭が、この日開幕した。トスカニーニが尽力したとされる音楽祭の創設は1938年。なので、たまたまではあったが、50周年という記念すべきイヤーであった。
この日が開幕日だということは、旅行前に知っていた。多分、音楽雑誌か何かから情報を得たのだろう。だから、きちんとそれを目指してルツェルンにやって来たわけだ。
一方で、チケットの予約はしなかったし、それどころか、何の公演なのか、どんなプログラムなのかさえも、事前に全く知らなかった。前日にルツェルン入りし、音楽祭事務局兼チケットオフィスに出向いて公演概要を確認し、そしてチケットを購入した次第だ。
(記憶が定かではないが、ホテルのチェックイン時間までの間に、車を路上に放置して出かけたのは、もしかしたらこの用事だったのかもしれない・・・。)
スイス祝祭管弦楽団は、現在のルツェルン祝祭管弦楽団の前身である。
また、指揮のアシュケナージは、この年の前年にはロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者に就任するなど、既に指揮者として幅広く活躍し始めていた。
しかし、本公演の概要を知った時、率直に思った。
「アシュケナージが指揮かよ・・・」
なんともビミョーである。
なぜかと言うと、その時まだ私の中では、この人は「ピアニスト」だった。「指揮はいいから、ピアノ弾けよ」ってなもんである。
私がアシュケナージを指揮者として初めて認めたのは、クリーヴランド管弦楽団と録音した「英雄の生涯」のCDだ。素晴らしい演奏だと思ったし、「これはピアニストの単なる余興じゃないぞ」とも思った。
このCDが発売され、入手して聴いたのは、我々が聴いたルツェルン音楽祭公演のずっと後のことだが、実際にこの録音を行ったのは、音楽祭公演のたった1か月前の7月だったというのだから、なんだか皮肉でおかしい話だ。
肝心の本公演の感想についてだが、さすがに30年以上も前ということで、ほとんど記憶に残っていない。(ステージの残像は頭の中にあるのだが)
もしかしたら素晴らしい演奏だったのかもしれないが、いかんせん指揮者に対して「ピアノ弾けよ」なんて気持ちを抱いている時点でアウト。感動が膨れ上がることはない。
なぜなら、感動というのは、期待の高揚度に比例するからだ。
ちなみに、毎年豪華なオーケストラがゲスト出演するルツェルン音楽祭。
今、この年の音楽祭プログラム冊子を取り出してきて、久しぶりにパラパラとめくってみた。
世界の二大オーケストラ、ベルリン・フィルとウィーン・フィルの両巨塔が、揃って音楽祭に客演だ。
ベルリン・フィル公演では、二人の指揮者が担っていて、一人はカラヤン、もう一人は小澤征爾。そして、ウィーン・フィル公演の指揮者はバーンスタイン・・・。
いやー、ため息が出ちゃいますな。