クラシック、オペラの粋を極める!

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2019/11/19 ベルリン・フィル1

2019年11月19日   ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団   ミューザ川崎
指揮  ズービン・メータ
ルートヴィヒ・クヴァント(チェロ)、アミハイ・グロスビオラ
R・シュトラウス  交響詩ドン・キホーテ
ベートーヴェン  交響曲第3番 英雄


先週はウィーン・フィル、今週に入ってコンセルトヘボウがあって、そしてベルリン・フィル
すごいねえ・・・。
いや、あの、来てくれるのは大変うれしいでございますが、そんなに立て続けにいらっしゃらなくてもいいんざますが・・。
例えばちょっと時期をずらしてくれないすかねえ?「行きたいけど、さすがに全部は行けないよなー」って人、結構いると思うんだよね。
12月後半なんてどうよ。この時期はうんざりするくらいの「第九」一色。アホかって。そういう時期に来日したら注目度は俄然アップ。辟易しているファンは感涙にむせぶと思うぜ。
え? クリスマス期は休暇だってか? それにその時期はどこのホールも第九公演で一杯だってか? あっそ。

えー・・すまん、冗談はさておき、天下のベルリン・フィル、来日でござる。心から歓迎いたす。
私はこのオケの合奏シーン、奏者たちの演奏姿を眺めるのが好きだ。
一人ひとりがソリストばりに体を揺さぶって演奏するため、ステージ全体にうねりが巻き起こる。自分たちの演奏に対する絶対的な自信。威厳さが漂う雰囲気と、対照的に演奏する喜びに溢れたにこやかな表情。そのカッコよさに、いつもため息が出る。

これが、他の追随を許さぬ世界最高の誇りってヤツだ。カラヤンの時代から変わっていない。

この日のプログラムでは、前半のドンキが「これぞベルリン・フィル」という「らしさ」が出ていた。
主題を担当するソロ・チェロに、他のパートの演奏が次々と覆いかぶさるかのように押し寄せる。ソロの控えに易易と甘んじようとしない強烈な主張と自発性。アグレッシブな掛け合いの妙を、各奏者たちが遊び楽しんでいるかのよう。そうしたアンサンブルの愉悦がこちらに伝わってくる。

こういう演奏をすると、シュトラウスの作品は俄然輝きを増す。粒立ちのきめ細やかさ。視界良好な音楽情景。素晴らしい。

メインのエロイカでも、ベルリン・フィルの高度な合奏能力は遺憾なく発揮された。
ただしここでは、ドンキで垣間見えた各パートの熾烈なせめぎ合いは鳴りを潜め、むしろ指揮者メータが主導する円熟的な安定感が際立つ。

伝わってくるのは、指揮者とオーケストラの蜜月な信頼関係だ。

実は本音を言うと、わたし的には物足りない。
以心伝心による予定調和は、このオーケストラには似合わない。仕掛けと化学反応こそ、ベルリン・フィルの真骨頂。相手はF1マシンなんだから、アクセルをブンと踏み込んでフルスロットルでぶっ飛ばせ!ってなもんだ。

まあいい。この安定感こそが今のメータの立ち位置であり、存在価値であり、協調関係の結晶なのだ。
それに、「物足りない」なんて感じていたのは、もしかしたら私だけかもしれなくて、演奏後、会場は盛大な拍手喝采に包まれていた。

明日聴きに行くブルックナーは、作品の規模もより大きくなり、神聖で壮大な音楽が構築されることだろう。きっと、長年に渡って築いてきたこのコンビの集大成が見られるに違いない。