2013年5月31日 東京フィルハーモニー交響楽団 サントリーホール
指揮 アンドレア・バッティストーニ
レスピーギ ローマ三部作(ローマの噴水、ローマの祭り、ローマの松)
ものすごいエネルギーが充満したエキサイティングな一夜。原動力はもちろん指揮者バッティストーニ。昨年の二期会のナブッコで、聴衆に大きなインパクトを与えた俊英である。
とにかく華美で、鮮やかで、熱狂的だ。オーケストラのドライブも絶妙。あの若さで東フィルの機動力を最大限に引き出した手腕と能力は驚異的である。
三曲の中では、特に祭りが良かった。最後のたたみかけるような追い込みは、まさに爆発、興奮の坩堝だった。聞いていて、自分の心拍数が上がるのが分かった。
この熱狂と沸騰を、私は理解することができる。かつてイタリアで経験したことを思い出した。
「カルチョ」である。
因縁のダービーマッチ、ローマ対ラツィオ。
たまたまローマサポーターに囲まれながら観戦した私は、ローマがゴールをあげた時、気が狂ったかのような雄叫びと誰彼かまわず抱きついて羽交い締めされる歓喜にもみくちゃにされ、メガネをぶっ壊されたことがある。
「ローマの祭り」エンディングの興奮と絶頂は、あれなのだ。
イタリア人バッティストーニは、それが何なのかを本能と血で知っていて、それをただ再現しただけにすぎない。それだけで、巨大な衝撃を与えることが出来るというわけだ。
前回来日のナブッコ公演鑑賞記で、私は「バッティストーニは、これからも着実に輝かしいキャリアを築きながら、ムーティのような巨匠への道を歩んでいくのであろうか。それとも、世界に大勢いる「良い指揮者の一人」として埋もれるのか。鍵となるのは、オペラだけでなく、コンサート指揮者としてどれだけ活躍できるか、であろう。」と書いた。
この日の演奏を聞く限り、コンサート指揮者として大成する下地も十分あるとみた。
プログラムによると、チャイコフスキーやラフマニノフ、ムソルグスキーといったロシア音楽に小さい頃から慣れ親しんでいたそうだ。
うん、確かにロシア音楽との相性もいいんじゃないかと思う。次の来日に期待したい。オペラでもコンサートでもどっちでもいいです。