クラシック、オペラの粋を極める!

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スカラ座の「ドン・カルロ」

NHK・BS4Kプレミアムシアターの放映によるスカラ座ドン・カルロ」を観た。
昨年12月7日のライブ。スカラ座の年間シーズンの最大の目玉である開幕公演は毎年収録され、そこにNHKが共同制作として加わっている。
その開幕に相応しい、豪華垂涎のキャスト。私も出来ることなら現地鑑賞したかったし、ミラノ詣でを真剣に検討した。残念ながら断念に至ったが、「いずれNHKがやってくれるだろう」と楽しみにしていた放映だった。

まず、指揮者シャイーやピット内の弦楽器奏者たちがノー・マスクであることに、改めてコロナ禍が明けたことを実感した。コロナ最中の上演収録に映っていた彼らのマスク姿は、やっぱりどう見ても異様だった。元に戻り、嬉しい。


ルイス・パスカル演出の舞台が、装置、衣装を含め、重厚だ。
現代的読替えではない伝統的なオーソドックス演出。下手な潮流に追従せず、物語と音楽のみで堂々と直球勝負するスカラ座の矜持を賭けた潔さ。舞台の上で「何かやらかしてくるのか」を気にせず、思う存分歌と音楽に集中できることの素晴らしさよ。これぞオペラの原点であり、音楽の底力。ヴェルディはかのごとくして聴くべきものなり。

演出上の工夫の一つとして、第4幕の冒頭、フィリッポが孤独のモノローグを歌う場面の前、フィリッポとエボリが密会し、不貞があったことを匂わせつつ、さらにエボリがフィリッポにエリザベッタの宝石箱(カルロの肖像が入っている)を手渡す、というシーンをわざと見せるように挿入したのは、面白い着眼点だったと思う。
これを見て改めて思ったのは、フィリッポの野郎、エリザベッタに対してはカルロとの関係を疑い、咎めるくせに、自分だって浮気してちゃっかりエボリにチョッカイ出しとるやんか! ということ(笑)。


歌手については、主役級は全員が超一流なので、個別に感想や評価を述べようとしても、みんな「素晴らしい」になってしまい、何だか様にならない。
(M・ペルトゥージ(フィリッポ2世)、F・メーリ(ドン・カルロ)、L・サルシ(ロドリーゴ)、A・ネトレプコ(エリザベッタ)、E・ガランチャ(エボリ公女))

ただ、一人だけ・・・ネトレプコに関しては、彼女らしい貫禄の歌唱の中に忍び寄る影が覗き、少々戸惑った。
彼女の声は年とともに太く重くなっているが、その太さの中に脂肪みたいなものが混じっている気がしてならない。音域によってムラも露呈。
大丈夫だろうか。心配になってきた。私の耳の方がおかしいのなら、それならそれでいいのだが・・・。


前回の記事で、ヨーロッパの劇場における韓国人歌手の活躍について触れたが、この「ドン・カルロ」においても何人もの韓国人歌手が出演。(宗教裁判長、修道士(先王カルロ5世の声)、フランドルからの使者たちなど)
スカラ座ヴェルディで、東洋人の彼らが上演をがっちりと支えていたのは特筆すべきことであろう。
さあ韓国民のみなさん、溜飲下げてください(笑)。