クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

シカゴ・リリック・オペラ

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 アメリカ三大オペラハウスの一つ、シカゴ・リリック・オペラ。リリックとは「叙情的な」「詩的な」という意味だが、オペラ用語として軽くてソフトな歌手の声質を表すこともあって、以前は勝手な思い込みで、小規模な室内歌劇場風をイメージしていた。収容3千人以上を誇る大劇場で、一流の出演者による本格上演が行われていることを知ったのは、そんなに昔のことではない。昨年8月、松本でのサイトウ・キネン・フェスティバルサロメが上演されたが、この舞台はシカゴ・リリックから貸し出された物である。
 
 この劇場を紹介するガイドブックや旅行案内に必ずと言っていいほど書かれているのが、「公演は毎回会員で占められ、一般の人、特に旅行者がチケットを入手するのは限りなく困難」だということ。中には、「一流ホテルのコンシェルジュでさえ手配不能」なんてのもあった。情報を鵜呑みにして「無理してシカゴまで出かけて、それで観られないのもナンだしなあ・・」と、私自身も結構尻込みしていた部分があった。
 
 かつて、ガイドブックの情報のとおり、定期会員のみで完売御礼となった時期があったのかもしれない。そこらへんは私も分からない。だが、少なくとも現在は決してそんなことはないようである。当劇場のHPでオンラインチケットを発売しているが、たいていの公演で一般用にも残席があり、楽勝で入手できる。
(ちなみに、旅行するにあたって、ガイドブックの内容は参考程度に留め、完全信用するのはやめたほうがいい。結構いい加減だし、情報が古いまま残っている。今の世の中なら、最新でホットな情報をネットで素早く簡単に入手出来るので、そちらの方が有益だろう。)
 
 劇場の外観はただのビルで、趣もへったくれもありゃしない。「歌劇場として相応しい建物」ランキングでは間違いなく世界の‘ワースト’トップテンに入ると思う。
だが、一歩ビルの中に踏み入ると、がっしりとした豪壮な佇まいで、雰囲気はなかなか良い。
階段には赤い絨毯が敷かれてエレガントさを醸し出しているが、幕間休憩時にその通路用階段の絨毯にそのまま腰を下ろして休んでいる人が結構いて、驚いた。ローエングリンの日は、上演時間が長いことから、開始前に劇場レストランが幕の内弁当の注文を受付しており、休憩時にそれを皆で階段に腰掛けて食べている光景に出くわした時には、思わず絶句してしまった(笑)。
 
 今回私は二公演を、それぞれ一階平土間中央と3階バルコニー前方で鑑賞したが、どちらも音響は良く、歌声はハッキリ聞こえた。ただ、はるか上方後方のカテゴリーランクの低い席だと、果たして音がしっかり届くかどうかは怪しいところだ。少なくとも、視覚的には相当遠方に感じることだろう。これはニューヨークのメトも同じ。
 
 観客の質、レベルは恐ろしく低い。楽しみ方の違いだと言ってしまえばそれまでだが、単なるお芝居を見に来ている人たちが多い。これはアメリカ全般における劇場での大きな特色でもある。オペラのストーリーも音楽も知らないで来ている人が多く、みんな一生懸命開演前にあらすじを読んでいる。幕が開いて舞台が豪華だとそれだけで拍手、有名な歌手が登場しただけで拍手。字幕で面白いセリフを見つけたら爆笑、別に大して面白くない出演者のコミカルな仕草に爆笑。ニヤッとしたりクスクス笑いではなく、声を上げて爆笑するのだ。どんなにそこで音楽が美しく鳴り響いている瞬間であったとしても。もう、救いようがないアホども。
 
 終演後は、ロビーにタクシー待ちの長蛇の列が出来る。ちゃんと劇場が「ここに並んでください」という立て札を置いている。確かに劇場のあるシビックセンタービルは地下鉄駅からはちょっと離れているし、終演時間頃はバスの往来もぐっと減るので、安全の観点からもタクシー利用は賢明だろう。私はたまたまホテルが市内の中心部で、劇場へも徒歩10分くらいだったので、歩いて帰った。夜の歩きは危険という噂もあるし、実際そうだったかもしれないが、少なくとも表通りでは、夜間でもたくさんの人が歩いている。
 
 
 公演鑑賞記はまた次回に。