7月31日に帰国し、本当はその直後から、国内のオーケストラ・コンサートに3つ出かけていた。
これらの鑑賞記も、元々は書きたい気持ちがあった。
だが、海外旅行記事を書き続けている中で、なんとなく水を差すような感じが嫌で、流れを止めずに旅行記を継続させようという気持ちが固まってしまった。ということで、結局パスにした。
2024年8月10日 東京都交響楽団 サントリーホール
指揮 ダニエル・ハーディング
ニカ・ゴリッチ(ソプラノ)
ベルク 7つの初期の歌
マーラー 交響曲第1番
まったくの勝手な憶測、自分がそう感じただけなので、「そうは思わん」、「そんな風には聞こえなかった」という意見があっていいし、ぜひお許しいただきたいが・・・。
都響は、この著名な指揮者からちょっとした威圧感を感じ、緊張したのではなかろうか。
あまりにも正確なタクト、次から次へと繰り出す的確すぎる指示。
「悪ぃけど、この曲隅から隅まで知ってるし、あなたたちの音、ぜーーーーんぶ聞こえてるからね」みたいな圧力。
初共演だったというのもあるし、ステージ上に少なくない客演奏者が見かけられたというのもあったかもしれないし、いずれにしても、何だかいつもとは違う都響の雰囲気だった。必死さが出ていたし、開放的ではなく、内に向かって格闘しているかのような印象を受けた。
最初は、ハーディングが音を精密にコントロールした結果の抑制なのかと思った。
だが、第1楽章終盤や第4楽章終盤の一気呵成の追い込みの場面では、そのスピード(単なるテンポという意味ではなく、音楽的な勢い)に、颯爽と付いていける奏者とそうでない奏者が現れ、全体として結構ギリギリMAX状態のように聞こえた。キズもいくつか散見された。
で、ハーディングはそういう状態をしっかり把握しながら、承知の上で更に煽り、追い込んでいく。「いやいや、もっと出来るよね」みたいに。
もちろんプロの演奏として決して破綻はせず、また、マーラー特有の高揚、絶頂感もあって、輝かしいスケール感はしかと見せつけた。
それでも、これほどすべてを出し切って消耗した都響を、私は今までに目の当たりにしたことがない。
本来マーラー1番なんか、得意技で軽々と演奏してしまうはずなのに・・・。