前回記事の続きの話をしよう。
前回は、特段クラシック音楽が好きなわけではない普通の人に「ヨーロッパのどこがお勧めか?」という質問をされた際の、自分なりの無難な回答についてであった。
実は、こういう質問もよくされる。旅行から帰ってきた後だ。
「今回はどこに行ってきたの?」
私の場合、毎回のようにドイツに行っているので、どこに行ったのかと聞かれれば、正直に答えるしかない。「ドイツだよ」と。
すると、私がしょっちゅうドイツに行っていることを知っている人から、こういう返しが来る。
「またドイツ?」「この前もドイツだったよね?」「ドイツ好きだねー(笑)」
「好きだねー」とか言われると、正直「うっせーよ」とイラッとすることもある(笑)。
しかし、そこは涼しい顔で大人の対応。間違っても「いや、だーかーらー、オレは音楽を聴くために行ってるわけ。ドイツは音楽大国で、各都市に劇場があり、オーケストラがあって・・・」
などとムキになって反論することはない。興味のない人たちにクラシック音楽の話を持ち込んでも、仕方がないしね。
そんな時、私はどんな風に答えるか。
「ドイツはいいよー! それぞれの街に地ビールがあって、これが美味いんだ!」
「ソーセージもまためちゃくちゃ美味いんだ!」
これだね。要するに、世間一般のドイツのイメージを持ち出す。
それに、食べ物・飲み物の話題というのは、すべての人が興味を持つ万能薬みたいなものだ。
もうちょっと詳しくドイツの魅力を語る時は、
「ドイツは世界遺産や観光名所が多くて、素晴らしいよ。ロマンティック街道、ノイシュヴァンシュタイン城、ライン川の渓谷下りとか、ケルン大聖堂とか・・」
また、ドイツは歴史的に「諸侯都市国家」として発展してきているので、それぞれの都市ごとに雰囲気が違う。ミュンヘン、ベルリン、ドレスデン、ハンブルク・・・それぞれの街並みや文化に独特の個性があって面白い、みたいに説明することもある。
あるいは、こう付け加えることも。
「やっぱり世界最高のベルリン・フィルを、現地のホールで聴くのは醍醐味だよね」。
クラシックに詳しくない方々でも、ウィーン・フィルやベルリン・フィルが世界最高のオーケストラだということくらいは、知識として何となく知っている。
実際はベルリン・フィルを聴かなくても、そのネームバリューを借りて、さり気なく自分の旅行目的について触れることも多いのであった。
もっとも、このように「なぜ毎回ドイツに行くのか」について一生懸命説明しても、結局「ふーーーん、あっそうなんですねー」であっけなく終わってしまうのであるが・・・。
やっぱり、ドイツというより、ヨーロッパ旅行そのものが普通の方々にとってなかなか縁遠いお話、というわけである。