クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

2019/8/22 イェヌーファの会

2019年8月22日   イェヌーファの会   東京文化会館小ホール
ヤナーチェク   イェヌーファ
指揮  城谷正博
ピアノ  北村晶子、西松甫味子
ヴァイオリン  山崎千晶
小林厚子(イェヌーファ)、森山京子(コステルニチカ)、琉子健太郎(ラツァ)、所谷直生(シュテヴァ)、与田朝子(ブリヤ家のおばあさん)   他


「日本はオペラの後進国だ」とぼやく私だが、実は公演そのものは結構やっているのである。
今、松本では「オネーギン」やってるし、これからのスケジュールでもサントリーホールでベンジャミンの日本初演オペラ、二期会が横浜で「イ・プリ」、藤原が新国立で「ランスへの旅」、N響が「フィデリオ」、そしてROHの引っ越し公演と続く。

何でもいいというのなら、鑑賞の機会はそれなりにあるわけだ。

で、決して何でもいいわけじゃない私が目を付けた公演が、この「イェヌーファ」であった。夏休みの8月は日本で特にめぼしい公演がないため、これはとても楽しみだった。

主催は「イェヌーファの会」だって。なんだそりゃ。知らん。
聞くところによると、新国立劇場が2016年3月に上演した際のカヴァー歌手だった森山京子氏が、「自分がこの素晴らしい作品を歌う公演を実現させたい」という思いから始まり、制作にこぎつけたらしい。
その意気込みたるや、実に素晴らしい。お金もかかっただろうし、大変だったと思うが、こうして公演は実現した。
しかも、びっくりしたのだが、ほぼ満席だった。森山さん、さぞや感慨深かったことだろう。

このオペラ上演を難しくしているもう一つの理由が、チェコ語にあることは間違いなかろう。
近年、日本のオペラ上演は、オリジナル言語上演が当たり前になっているが、慣れない言葉が壁として立ちはだかったはずだ。今回の公演では、譜面台と楽譜を使用したコンサート形式上演(照明を使ったり、軽く演技をしたりしていた)だったが、仕方がなかったと思う。

また、オーケストラではなく、ピアノ伴奏(ヴァイオリンとシロフォンを加えていた)だったのも、同様にやむを得ない。
森山さんの思いのとおり、この素晴らしい作品を上演する機会を作ったことが、何よりも重要だ。

出演した歌手の皆さんが、やっつけ仕事でなく、ヤナーチェクの音楽を十分に勉強して本番に臨んできたのは、称賛に値する。
もちろん、言語指導のトレーナーや、新国立劇場のスタッフとして活躍する指揮者城谷さんの指導も、上演の成功に大きく貢献したことは間違いなかろう。

それにしても、上に書いたとおり、会場が小ホールとはいえ、満員御礼だったのには驚いた。残念ながら日本ではマイナー扱いのイェヌーファに、これだけのお客さんが入るとは想像もしていなかった。

こうしたマイナーの作品であっても、それを聴きたいと願うコアなお客さんは、少なからずいるという証しなのだとしたら、こんなに嬉しいことはない。こうした公演を少しずつでも積み重ねることが、オペラの裾野を広げ、充実した鑑賞機会の提供に繋がっていくものと信じたい。「椿姫ばっかりやってんじゃねえよ」の嘆かわしい環境が、少しずつ変わっていくことを期待したい。

 

・・・単に、夏休みでめぼしい公演がなくて、珍しい物に群がっただけだったりして(笑)。