既に開幕している今年の「セイジ・オザワ松本フェスティバル」。
絶対的な看板であり支柱だった小澤征爾氏が亡くなってしまい、フェスティバルそのものの存続が心配された中、首席客演指揮者として沖澤のどかさんを迎え、更には世界的指揮者アンドリス・ネルソンスも登場するということで、ひとまずファン・関係者を安心させたところだったが・・・。
なんと、昨日、そのネルソンスが緊急降板することが発表された。
「健康上の理由」ということらしいが、どうなんすかねぇ・・よく分からんねぇ。猛暑と地震と台風のトリプルパンチが恐くなったんじゃないの??
(本当に体調不良だったら、ごめんなさい。)
毎年8月に信州で開催されるこのローカル音楽祭が、世界にその名を轟かせるまでに発展を遂げたのは、それはもう小澤さんの絶大なネームバリューの力が大きいことは、誰もが認めるところ。
この音楽祭を小澤さん抜きでもこれまでどおり活況を維持継続させていくためには、やはり「顔」となるような強力な核が必要で、世界的なビッグネームのA・ネルソンス、そして、若き俊英、将来の日本のクラシック界を背負って立つ沖澤さんという今年のツートップは、まんざらではない、明るい希望が持てる人選であった。
その意味で、ネルソンスの降板は、期待に冷水を浴びせた格好で、ちょっと躓いた感じである。特に、ネルソンスの指揮を楽しみにしていたファン、彼の音楽を聴くために松本まで遠征する予定を組んだ愛好家の皆さんは、大きなため息をついたことだろう。
実は、今年のフェスティバルの開催概要が発表された時(4月だったかな?)、私はネルソンスのコンサートに行こうと心に決めた。
具体的には、8月16日(金)に出掛け、その日のブラ1・ブラ2公演を鑑賞し、一泊して翌日帰るという計画を組んだ。チケット発売開始の前段階から、先行して松本市内のホテルを予約した。
しかし、5月と7月の2度の海外遠征を目の前にし、想定以上に出費がかさむ事態が現実に迫り、懐事情と相談の結果、松本行きを泣く泣く断念したのであった。予約したホテルもキャンセル。
その決断が良かったのかどうかは、一概には言えない。沖澤さんが窮地を救い、見事に名演に導いた、なんて結果もあり得る。
だが、大抵の場合、「なんだよネルソンス、ドタキャンかよ・・」というがっかり気分を抱えたまま松本に行っても、ろくなことはない。そういうモヤモヤだけは避けられたわけである。
ていうか、明日は台風が関東に接近するし、そもそも「松本に行けるのかよ」という不測の事態の危険性もあるわけで、ここはやっぱり断念は正解だったということにしておこう。
問題は今後、来年以降だ。
サイトウ・キネンは、有能な奏者が揃う、優れたオーケストラである。
また、フェスティバルが「セイジ・オザワ」の名を引き続き冠していく以上、相応の一流指揮者はぜひ招聘したいところ。
ここ数年は、デュトワだったり、J・ウィリアムズだったり、その時々で客演指揮者の招聘を模索しているような感じだったが、ネルソンスは2022年にも客演しており、今回実現すれば、結び付きがいっそう強固になって、新たな看板への期待も高まるところだった。
一方で、ネルソンスは世界でも最も多忙な指揮者の一人。そう簡単に音楽監督を引き受けてくれるかどうかは全くの未知数。8月は老舗のザルツブルク音楽祭の真っ最中で、お誘いの声がかかれば、当然そっちに行きたいだろうし。
セイジ・オザワ松本フェスティバルは、はたして今後どういう道を切り拓いていくのだろう。