クラシック、オペラの粋を極める!

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2009/8/23 サントリー・サマー・フェスティバル 班女

2009年8月23日 サントリーサマーフェスティバル サントリーホール(ブルーローズ)
第39回サントリー音楽賞受賞記念公演
細川俊夫 オペラ「班女」
指揮 ヨハネス・デブス
演出 ルカ・ヴェジェッティ
管弦楽 東京シンフォニエッタ
半田美和子(花子)、フレドリカ・ブリレンブルク(実子)、小森輝彦(吉雄)


 細川俊夫サントリー音楽賞受賞記念として、2004年フランスのエクサンプロヴァンス音楽祭で初演された班女が日本初演された。

 私は現代音楽は苦手だ。
 批判や反論があることを承知で言わせてもらうが、現代音楽の作曲家たちは、単に「これまで無かった新しい響き」を追求、開発、実験しているだけではないかと思う。

 音楽の三要素、リズム・メロディ・ハーモニーのうち、現代音楽において一番重要なのがハーモニー、というより「響き」。メロディは無いに等しい。リズムは一定でなく、不安定さをことさら強調。その「響き」も今までに無かった新しい物を求めるから必然的に不協和音が多くなる。
 自分たちはそうした開発競争に躍起になり、自己満足しているかもしれないが、一部を除く多数のクラシックファンがそんな物を支持するとでも思っているのだろうか?作品を発表しても、単発でお蔵入りしては意味がないと思うのだが・・・。

 この細川氏の作品もご多分に漏れず、そうだ。(この班女だけでなく、細川氏の他の作品もみんなそう。)
「ふわああ~・・・」
「ひゅう~~・・・」
「ほえぇ~~・・・」
「トントントン、ととと、ドカン、ドド、ッットト、ッテッテ・・」
 これの繰り返し(苦笑)。怪談のBGMにぴったり。

 さてと。
 じゃあ、なんでそんな細川氏のオペラを見に行ったかというと、音楽というよりこの「班女」の台本自体に興味を持ったからだ。ご存じ三島由紀夫が能からヒントを得たという作品。

‘愛し合っていた男と離れてしまい、再会するためひたすら待ち続ける女。次第に狂っていき、やがて「待つこと」自体が彼女の目的となる。ある日、待ち続けた男が帰ってきたが、もはや彼女はそれを認識できない。男は去り、女は今日も待っている・・・。’

「音楽というより班女の台本自体に興味を持った」と上に書いたが、正確に言い直すと、
「現実と夢想のすれ違いや錯乱、緊張などがテーマになっているこの作品に、音が付くとどうなるかに興味があった」と言える。そして、このような作品にこそ、現代音楽の不安定な響きがぴたりとはまる。(こんな作品だけにしかはまらないとも言える)


 怪談は、どういうわけか「夏」と決まっている。怖さが涼を生み出すからか。
 この夏私は、班女を見て聴いて、ぞくぞくするような冷涼をもらいました。