クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

イタリア・リラ

 2002年1月1日、欧州に統一通貨ユーロが流通された。(銀行取引はそれ以前から)
ドルに対抗する世界的基軸通貨を目指しての導入だったと思うが、これによって我々一般旅行者も格段に便利になった。
 なんといっても、複数国をまたぐ旅行で移動の度に両替をする手間が無くなったのが大きい。
 両替は面倒くさい。手数料も取られるし、レートにいちいち過敏になる。複数国の紙幣貨幣を持つのも大変だ。ユーロはそうした煩わしさから解放してくれた。

 ユーロ導入時の一般流通価格は一ユーロ115円くらいだったと記憶する。それがどんどん値が上がって昨年前半(金融危機の前)は170円近くまで跳ね上がった。このユーロ高は頭が痛かった。欧州に出掛けると割高を痛感した。ユーロ導入時にもっと大量に買っておけばよかったと後悔した。今は円高でちょっとホッとして・・・

 ・・って、今日はユーロの話ではなかったね。イタリア・リラでした。すみません。

 イタリア・リラ。私は‘イタリラ’と呼んでいた。懐かしい。

 前回のブログで「ダントツに面白い」通貨だと書いた。当時を知っている人は分かると思う。何が面白いって、とにかく桁が多いのだ。

 1リラ=約0.07円。100リラ=約7円。

 財布の中に約3万円くらい入れるとしよう。そうすると、40万とか50万のイタリラ紙幣が財布に入るのだ。少し多めに持とうとすると『1,000,000』といった所持金になる。
 一気に金持ちになった気分になるのだ!これは楽しい!

 一方で、この桁の多さは時に頭の中の正常な機能がマヒし、混乱に陥る。わけがわからなくなるのである。

 エピソードを紹介しよう。

その1
 初めてイタリアに行った時、ローマで滞在するホテルを探すべく現地の観光案内所に入った。担当者から「いくらくらいで泊まりたい」と聞かれ、シングル7,000円くらいを目安に「1万リラ」と答えた。桁を間違えている。7千円で泊まりたいのなら「10万リラ」と答えなければならない。要するに混乱を来したわけだ。

 そうしたらその担当者何て答えたと思う?

「Sleep-in outside!」

 野宿しろ、だとさ。私は最初この人は何を言っているんだろうと思った。桁を間違えていることに気付いたのは
「Are you serious?」(本気で言ってんの?)と言われたときだった。

その2
 Kくんとのこの旅行の数年後、ミラノにて。場所はミラノ・スカラ座。この時もチケットの事前入手が叶わなかった(っていうか、最初から諦めていた)私はダフ屋交渉を行った。演目はムーティ指揮の「トスカ」。
 現れたダフ屋は二種類のカテゴリーを所持していたが、なぜか安い方の席をしきりに売ろうとする。若造に見られたか?
 そりゃできれば良い席で観たい私は「もう一つの方はいくらなの?」と聞いた。
 ダフ屋は答えた。

「ワンミリオン・・・」

 わ、わ、ワンミリオン!?!? 
この一言で私の頭の中のレート変換機能は完全に破壊された。
「100万???100万円??車を買うのか?100万円なんて払えない!100万なんて!100万円なんて~!!」頭を抱えた。

 ぶっ壊れている私。100万円じゃない。100万リラだ。つまり約7万円だ。だが、パニックになった私はあえなく安い方のチケットを買ったのであった。

その3
 今回のKくんとの旅行。ナポリにて。
 夕食を食べようとレストランを探すため旧市街をさまよっていたら、小柄なイタリア人青年が英語で話しかけてきた。
「すみません。私はお金がありません。タバコを買いたいです。ご飯も食べたいです。どうかお恵みください。」
 なんだよ、物乞いかよ。うっとうしい。
「お願いします。1,000リラでいいです。1,000リラ恵んでください。」

 1,000だと!?虫のいいヤツだ。ダメダメ!
 私は「自分はお金を持っていません!」と言って結局その青年を追い払った。
 そのやりとりを一部始終横で聞いていたKくんが突っ込んできた。
「1,000リラなんて、たったの70円だよ。たかだか70円を恵んでくれというヤツもヤツ。一方で、それに対して『自分は金を持っていないから』という理由で断るのも、いかがなものではないですかい?(笑)」

 だから、ね、俺はイタリラのレート変換は苦手なんだよ。


 ドイツ、フランス、その他ユーロ通貨導入に踏み切った欧州各国の中で、一番頭の切り替えの必要に迫られたのは、私は絶対にイタリア人だと思う。桁の整理がさぞかし大変だっただろうね。