ザルツ二日目。旅行を中止したKさんからウィーンフィルのチケットをいただいたことにより、この日は午前11時からそのムーティ・ウィーンフィル(2回目)、午後3時から夜鳴きうぐいす&イオランタ、午後7時からコシ・ファン・トゥッテ、という人生初のトリプルヘッダーになった。もう、狂喜すべきなのか自らを呆れるべきなのか、ようわからん。しかし、この日は朝から天気が悪く、観光には不適だった。劇場への一日入り浸りは正解だったのかもしれない。
夜鳴きうぐいす&イオランタの公演にあたって、私はやらなければならないことがあった。余ってしまったKさんのチケットを売り飛ばすのである。Kさんからは「もともとパーになってしまったチケット。売れるだけでも儲けもの。いくらでもOK。」と言われていたが、この公演は最終的に完売であり、スター歌手ネトレプコが出演するということで、なんとなく定価(カテゴリーⅢ・190ユーロ(約2万2千円))で売りさばけるのではないかという楽観的予測をしていた。
会場に出かけると、「チケット譲ってください」というカードを手に持った紳士淑女を数名発見!おっ!やっぱりいけるぞ! さっそく交渉開始。
ところが・・・。
8人に片っぱしから声をかけてみたのだが、全員が自らの予算に上限を設けていたのだ。全員から「190ユーロは予算オーバーなので、結構です。」と断られた。な、なんということだ!!
こうなってくると、こちらは売りたいわけだから、値段を下げざるを得ない。150ユーロで持ちかける。それでも「ノー!」と答えられる。仕方がないので、その中でどうしても観たそうな顔をしていたフランス人紳士に、ほぼ相手の要求どおりの100ユーロで売っぱらった。半額かよ!くそっ!
これには私自身大変驚いた。
もし私が逆の立場だったら、よほどダフ屋から高額で吹っ掛けられたら躊躇するかもしれないが、カテ3の定価だったら飛びつくだろう。なぜなら、私はどうしても観たい(聴きたい)からこそ「チケットください」作戦を決行するわけであり、希望価格に上限を設けていたら結局観られないという可能性が起こりかねないからだ。ましてや、カテ1だったらともかくカテ3でめちゃくちゃ高いわけでもないのに・・・。
こいつらは要するに「観られたらラッキー、観られなくてもオッケー」という‘あわよくば’連中なのだろうか?オレみたいなクラヲタではないのか??
ちなみに、超プラチナチケットと化したムーティのマクベス公演では、「チケットください」カード持参者の数は大幅に膨れ上がっていたが、そいつらも「定価じゃ、ちょっとぉ・・・」という不徳な奴らばかりだったのだろうか?謎である。
さて、無事に(??)任務を終えて会場に入り、ここで友人Sさん御夫妻と待ち合わせ。Sさん夫妻とは翌日から行動を共にして、レンタカーで郊外ドライブに出かける約束になっている。
ここで、びっくりしたことが。Sさんとはたまたま日程が重なったので約束し合ったものの、基本的に旅行計画はそれぞれが立てた。当然各公演のチケットの申込みも別々。にもかかわらず、私の席の真隣りがSさんだったのだ!なんという偶然!
もっとも、海外での鑑賞で、基本的に外国人ばかりであるにもかかわらず、なぜか隣が日本人だったという経験が少なからずある。枠とか配慮とかがあるのだろうか・・・。まさかねえ・・・。
もしSさんとお互いの旅行の事を打ち明けず、知らないままザルツに来ていたら、この瞬間さぞや面白いことになっていただろうと思ったが・・・親友なので‘知らないまま’なんてことはありえないなと思い直した。