クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

1988/8/19 ブレゲンツからザルツブルクへ

本日の行き先はザルツブルクブレゲンツから300キロを超えるドライブとなる。
考えられるルートは2通り。
インスブルックを経由するオーストリア国内ルート、もう一つはミュンヘンを経由するドイツルートだ。

どちらのルートがベターなのか分からなかったので、ホテルの人にアドバイスを求めてみた。
しかし、ホテルの人もよく分からなかったみたいで、答えは何だか要領を得ないものだった。
(尋ねたこちらの英語が拙くて、きちんと伝わらなかったという可能性もある。)

地図上では一見ミュンヘン経由の方が遠回りのように見えるが、インスブルック経由は山間の谷の道なので、もしかしたら時間がかかるかもしれない。景色はいいかもしれないけど。

二人で話し合った結果、ミュンヘン経由に決定。

車を快適に飛ばす、という意味で、このルートの選択は正解だったと思う。ドイツは速度無制限区域があるアウトバーンが整備され、アクセルを遠慮なくグイッと踏み込める、とても気持ちがいいドライブだった。
(それにしても、120キロくらいで走行していても、追い越し車線からそれ以上の物凄いスピード(150キロくらい出てる?)でビューッと抜き去っていくドイツの運転事情、ヤバ過ぎる。)

ミュンヘンに近づくにつれ、助手席に座っているOくんがソワソワしだしたのが分かった。
私はサッカー好きだが、彼もまた然り。中学時代はサッカー部だったし、幼少の頃から海外サッカー番組(オールドファンなら懐かしい「三菱ダイヤモンドサッカー」)で、独ブンデスリーガの試合をチェックしていたほどだった。
そんなサッカー好き人間にとって、名門バイエルン・ミュンヘンというチームを擁するミュンヘン市は、特別な感情を抱かせる憧れの都市なのである。

案の定、横で「ねぇー、ミュンヘンにちょっと寄れないかなあ・・。」と言い始めた。
んーー、その気持ちはわからないでもない。私だって時間に余裕があるのなら寄りたいさ。
でもねー、余裕がないんだな、残念ながら。
ザルツブルクの滞在はわずか一泊のみ。市内観光する時間は、実質今日しかないんだ。

ということで却下。許せ、Oくん。

ミュンヘンの外環道路に入ると、Oくんは「あぁぁ・・ミュンヘン~・・・」と呻きだす(笑)。
私は聞こえないふりをしてアクセルを踏み続け、市内に入らずにザルツブルク方面へとハンドルを切る。さようならミュンヘン。いつかきっと訪れる機会がありますように。
(まさかその後20回以上も訪れる慣れ親しんだ街になろうとはね。この時はまったく想像もしなかった。)


途中のドライブインで、休憩がてら、昼食の調達をするため、車を止めた。我々は今回のドライブ旅行中、移動時間と旅行資金の両方を上手に節約するため、昼はこのようにレストランに入らず、適当にパンやハンバーガーなどを買い、車内で済ますことが度々あった。

お店に入り、商品の棚に付いている値札を見て、「あっ!」と声を上げてしまった。

「やべぇ、ドイツ・マルクじゃん・・・」

我々はドイツ・マルクを所持していない・・。
そりゃそうだ、ドイツは旅行の計画にまったく入っていなかったんだからな。今、たまたま通過でドイツにいるだけだ。
で、カードも使えないとなると、我々はたかだかパン一個もありつけないということか!?
そりゃ悲しい・・・。

この頃、つまり欧州共通通貨ユーロが導入される以前、ヨーロッパ複数国をまたぐ旅行をする場合、各国ごとに両替する必要があるという、実に面倒くさい時代だった。

スイスはフラン、オーストリアはシリング、ドイツはマルク・・・。
更に、フランスはフランス・フラン、イタリアはリラ、オランダはギルダー・・・。

で、円をフランに、そのフランをマルクに、そのマルクをシリングに・・なんていう両替をやっていくと、その都度コミッション(手数料)を取られて、どんどんと貨幣価値がすり減っていく。

ユーロの導入は画期的だった。欧州域内の様々な障壁を撤廃させ、潤滑な経済活動を促進させる絶大な効果をもたらし、同時に、我々のような旅行者にも、「両替からの解放」という多大なる恩恵が与えられたのであった。

しかし、すべていい事づくしのはずだったそのユーロ圏が、今、ぐらぐらと揺らいでいるというのは、いったいどうしたことであろうか?
激動の世の中。世界はまさに一分一秒の単位で変移している。そして、その先に何が待っているのかは、誰も分からない・・・。


ドライブインでの話に戻そう。
私は店員に恐る恐る尋ねた。
「あのう・・スイス・フランかオーストリア・シリング、使えませんですかね??」

「どっちも大丈夫ですよ。」
え?? ホント??
あっそう、他国通貨、普通にそこらへんのお店で使えるんだ・・・。

いや、たまたまスイスやオーストリアに近いドイツの南部地域だったから使えたのかな。別の地域だったらそうはいかなかったのかもしれないな。

いずれにしても、ここでパンを買えたのは良かった。腹ごしらえが出来るし、ザルツブルクに到着したら、ただちに観光を始められる。

さっそくスイス・フラン紙幣で支払うと、なんと、お釣りのコインがドイツ・マルクで返ってきた(笑)。

まあ当たり前か。でも、いらねえ~。