クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

2024/5/26 ドン・キショット

2024年5月26日  パリ・オペラ座   バスティーユ劇場
マスネ   ドン・キショット
指揮  パトリック・フルニリエ
演出  ダミアンノ・ミキエレット
クリステャン・ヴァン・ホーン(ドン・キショット)、エティエンヌ・デュピュイ(サンチョ)、ガエル・アルケス(ドゥルシネ)、エミー・ガゼイエ(ペドロ)、マリーヌ・シャニョン(ガルシア)   他

 

パリでお国物のマスネ作品を観られる、しかも新演出、というのは、計画段階で心が踊った。当初発表されたキャストも、新演出に相応しい豪華歌手が名を連ねていた。ドン・キショット役がイルダール・アブドラザコフ、ドゥルシネ役がマリアンヌ・クレバッサだった。
それが上記のとおり変更になり、やや水を差された。

オペラ上演において、キャスト変更は日常茶飯事であることくらい、頭では理解している。
でも、アブドラザコフやクレバッサの名前を見つけたことでこの公演を選択した部分は、大きいわけである。
さすがに「一流歌手のネームバリューで釣ってやろう」みたいな悪意はないだろうし、むしろ劇場にしてもキャンセルの迷惑を被った側なのかもしれないが、「勘弁しろよ」という気持ちはどうしても燻った。


ところが、いざ幕が開き、演奏が始まってしまえば、そんなことはすっかり忘れ、すぐに舞台に夢中になれる。
オペラ公演というのは、確かに出演歌手の歌や声がその一端を支えている部分はある。
だが、主軸は音楽なのだ。マスネの音楽が、すべてを整え、浄化してくれるのだ。


ミキエレットによる演出がオシャレ。
読替えによる現代演出。あくまでも自分がそのように捉えただけだが、ドン・キショットは、皆から「時代遅れ」だとバカにされている、峠を過ぎた作家。既に奥さんを亡くし、昔を回顧して「あの頃は良かったなぁ・・」という夢を見る、そうした夢の中の物語、という設定。恋するドゥルシネが、その奥さんというわけだ。
古臭い中世の騎士物語が、鮮やかに今時の物語に蘇った。現実から夢へ、夢から現実へと移る舞台装置の転換もとてもスムーズで違和感がない。さすがミキエレット。


歌手では、主役のC・ヴァン・ホーンが代役として見事に穴を埋めた。演技も秀逸。
メトロポリタン・オペラでバリバリに活躍しているバス。今月末には、メトロポリタン・オペラ管弦楽団の来日公演に同行し、E・ガランチャと共にバルトーク「青ひげ公の城」を歌うことになっている。すぐにまた会えることが楽しみだ。

来日予定ということで言えば、サンチョ役のE・デュピュイもそう。彼もまた今月下旬、まさに同じ時期にロイヤル・オペラ・ハウスの引っ越し公演に同行し、リゴレットを歌うのだ。すごい偶然。

もし二人がここパリで共演しながら「また東京で会おう!」なんて話し合い、「一緒にメシでも」なんてことがあったら、そいつは素敵だろうなあ。
円安だから、美味いもんが思い切り安く食べられるぜ!(笑)。