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2024/6/5 都響

2024年6月5日   東京都交響楽団   東京芸術劇場
指揮  エリアフ・インバル
ブルックナー   交響曲第9番(SPCM版、A・フィリップス最新改訂による第4楽章付)

 

第1001回の定期演奏会
前日の「1000回」(@サントリーH)の方が特別なんじゃないかと思い込む人もいるかもしれないが、単なる気分の問題。そう思う人は、それで自分の気分が盛り上がるのなら、よろしいかと。
私なんかは、同じ指揮者、同じ演目だし、同じリハーサルをしているのだから、どっちでもいい。(もちろんホールの違いはあるけどね。)
もし1000回と1001回とで演奏上に違いが出るのだとしたら、それはプロとしての資質上の問題。

一方で、都響定期演奏会を1000回にまで積み重ねたということについては、心からお祝いを申し上げたい。
偶然だが、今月は東京フィルハーモニー交響楽団も同じく1000回定期を迎えるわけだね。素晴らしいね。


記念公演を指揮するのは、桂冠指揮者のインバル。これまでの都響での功績を考えれば、当然の御指名と言えようか。

演奏はさすがに気合いが入っていて、パワー全開、技術レベルも高く、まさに渾身の演奏だった。
おそらく、記念公演ということでチケットもソールドアウトし、満員の聴衆が集中力をもって耳を傾けているのが、ステージ上の奏者さんたちにちゃんと伝わっていたのだと思う。
で、そうした熱気を受け止め、気迫を音に変換して吹き込み、圧倒的な頂点に導くことが出来るのがインバルという指揮者なわけだ。


さて、問題の(?)SPCM版、A・フィリップス最新改訂による第4楽章について。
正直な感想としては、やはり違和感はある。ブルックナー風ではあるが、それでも誰か別の人が作り、取って付けた感が拭えないのだ。

ところが、配布プログラムに掲載されていた解説を読むと、「ブルックナーが遺した、実に490頁に及ぶ手稿や草稿を改訂」したというもので、このうち約3分の1は完全なオーケストラ・スコアが残っていた、というのである。
つまり、完全ではないが、そのほとんどはブルックナー本人のイメージに沿っていることになる。「ホントかよ!?」と勘ぐりたくなるが、そういうことらしい。

ということは、単に聴き手側の先入観と聴き慣れの問題なのであろうか・・・。

いずれにしても、多くのブルックナーファンの意見と同じく、「三楽章で終わりでいいじゃん」に、私も一票。


未完作品を補筆するのは、定着度や固定観念、好みの問題、所詮は学術研究的な価値でしかないという議論もあり、一筋縄ではいかない難題であろう。
そういう意味でいうと、マーラー10番を補完したクック、トゥーランドットを補完したアルファーノ、ルルを補完したツェルハなどは、良い仕事をしたのだなと、改めて思う。

それからもう一つ。
せっかくの記念公演だというのに、せっかくの名演だというのに、あちこちから作品の補筆の件が話題に上ってしまうのは、どうなのだろう?

インバルは、さぞや満足したことだろう。

都響さんは、それで良かったの??