クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

2008/2/7 ミュンヘン4 ノルマ

2008年2月7日 バイエルン州立歌劇場
ベッリーニ作曲 ノルマ
指揮 フリードリッヒ・ハイダー
演出 ユルゲン・ローゼ
エディタ・グルベローヴァ(ノルマ)、ソニア・ガナッシ(アダルジーザ)、ゾラン・トドロヴィッチ(ポリオーネ)、ロベルト・スカンディウッツィ(オロヴェーゾ)他


 ノルマと言えばマリア・カラス。不世出のソプラノ。それは誰もが認めよう。ところが、カラスの時代から半世紀も経ってもノルマ歌いの後継者は現れない。カラスの信奉者はそれでも構わないと言うかもしれないが、それでは寂しい。この窮地を救えるのは現存ではただ一人。グルベローヴァをおいて他にいない。

 彼女はその時を待った。機が熟するのを。キャリアの最高到達点でノルマに挑戦したいと言った。そして今、満を持してその機を迎えた。

 グルベローヴァは賢明にも、カラスとは違ったアプローチを試みた。愛に悶え、嫉妬に狂うノルマでなく、子を思う母の苦悩の気持ちを全面に押し出した。そしてその試みは間違いなく成功したと思う。心情の揺れ動きを克明に描写する迫真の演技と、衰え知らずの歌唱のテクニックは相変わらず驚異的だ。

 観客全員が固唾を呑み、息を潜めて聞き入るという張り詰めた空気の中、第一幕の有名なアリア‘清らかな女神よ カスタ・ディーヴァ’が消えゆくように歌い終わると、まるで爆発したかのような喝采が訪れた。その時、我々の目の前には紛れもなく本物の女神が降臨していた。

 何を隠そう、グル様のノルマを見るためにミュンヘンを訪れたのは一昨年に次いで二回目だ。2006年2月のプレミエの時は、世界中のファンがミュンヘンに集結したと聞く。事実、私の知り合いだけでも3人がプラチナチケットを片手にミュンヘンに詣でた。偉大な芸術家の集大成を体験できる最高のチャンス、絶対逃すことの出来ない機会。当然であろう。

 私としてはここで直ちに新時代のノルマ歌いの称号をグルベローヴァに捧げたいところだ。ところが残念なことに、彼女がノルマを歌う場所は限定的で、オペラだとこのミュンヘンだけだ。ウィーンでさえコンサート形式上演しか行われていない。また、録音も圧倒的な評価に至っていない。やはり、カラスを凌ぐことは不可能なのであろうか・・・。