クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

2024/3/27 ハーナウ(車内でトラブルを目撃)

帰国の日。
午前中にバーデン・バーデンを離れ、国際空港のあるフランクフルトへ鉄道で移動。
ただ、日本へのフライト出発が午後7時40分のため、時間が随分とある。たとえラウンジを利用するとしても、長時間をとても空港内では過ごせないため、どこかで観光をするしかない。

旅行の出発前段階で予め検討し、フランクフルト近郊のハーナウという街を訪れてみることにした。フランクフルトから約20キロ、乗換なしの近郊線Sバーンで約30分。

このSバーン乗車中に、自分の目の前でちょっとした事件が発生した。

私のすぐ前に座っていた50代くらいの御夫婦。普通の旅行客。どこの国の人かは分からないが、お顔立ちからラテン系っぽい。英語がとても流暢なので、もしかしたらいわゆるヒスパニックのアメリカ人かも。当然ドイツ語は話せない。

このお二方が、車内検札に引っ掛かってしまった。

お二方は切符を「1枚で2人分」として、何の疑念も躊躇もなく検札係員に提示。
ところが、実際の切符は「一人用」。二人のうち一人は有効だが、もう一人は切符を持っていないとみなされ、違反、罰金を命じられてしまったのである。

御夫婦は驚き、うろたえ、「そんなことはない、そんなはずはない!」と全力で反論。

本人たちの訴えによる事情、経緯はこう。
自分たちは観光客。初めてのドイツで、到着したばかり。ホテルに向かうためSバーンを利用するにあたり、切符の買い方が分からなかったため、自動券売機の所にいた親切な人に手伝ってもらい、2人分の切符を手配してもらった。当然その人にきちんと「2人分」と言い伝えたため、渡された切符は何の疑いもなく2人分と信じ、それを持って乗車した。
つまり、決して悪意、不正ではない。私たちは悪くない。だって、我々としては2人分を買ったのだから・・。

やりとりの一部始終を聞いていた私も、彼らの表情や言い方から、説明した事情、経緯そのものはたぶん嘘や偽りはないのだろうなとは思った。

これに対し、検札係員は、断固として冷徹、情け容赦無し。
「ダメーーー! あなた方が持っているチケットは一人用。つまりもう一人は不携帯。よって違反。だから罰金。」

まったく取り付く島もない。しかも、めっちゃ威圧的。怖っ。

かなりの押し問答があった。夫婦は必死に必死に訴えた。しかし、どうしようもない。何を言っても、どう説明しても、ぜーーっっったい許してくれないっ!!

近くにいた一人の英語堪能なドイツ人が仲介に入り、二人を諭す。
「おそらくここで違反行為を認めず、罰金支払いを拒むと、あなた方は警察に通報されてしまうでしょう。ここは一旦罰金を払い、その領収証を持って、旅行会社とか保険会社とか、然るべき機関に相談した方がいいのでは。」

横で聞いていたが、なんと素晴らしいアドバイス
私にはとてもこの仲介は出来なかったな。ムリ。

御夫婦は大きく溜息を付き、間に入ってくれたドイツ人に感謝をし、最終的に罰金支払いに泣く泣く応じた。

金額60ユーロ。1万円弱。その場でクレジットカードで支払った。

でもね・・・。

仲介の人が言ったことは、その場を収めるための落とし所アドバイスとしてベストだったと思う。
だが、冷静に考えて、仮に言われたとおり然るべき機関に泣きついても、そうした事態をカバーする附帯保険にでも入っていない限り、おそらく60ユーロが戻って来ることはないだろう。
悪意がなかったとか、騙された被害者だとか、そんなことは鉄道会社側にとって関係ない。1人分の切符しか持っていなかったという事実。これがすべてなんだ。
今さらどうしようもないが、元々チケットの買い方が不安だったら、対面窓口のある売り場で購入すべきだったし、そうしたことも含めて結果責任を負わなければいけないんだ。

初めてのドイツ旅行の初っ端で躓いてしまった御夫婦、本当にお気の毒。
私は心の中で彼らに言った。
「この俺だって、これまでに痛い目に遭った経験、いっぱいありますよ。」
「つい先日もパリで、鉄道トラブルで余計な56ユーロ(タクシー代)を支払った。あなた達の60ユーロだって、同じようなトラブル代と思うしかないんじゃないですか?」
何の慰めにもならないが。
(そもそも心の中の呟きそのものが、彼らに届かず、慰めになってない)

それにしても、目の当たりにした切符不所持の恐ろしい結末・・。
「外国人だから」「不慣れだから」がまったく通用しない、絶対許さないドイツ人係員の非情冷徹さ。改めて思い知り、ゾッとした。
(私自身、以前に日本国内で友人との旅行中、「2人用」と信じて疑わずに販売機で購入したバス切符が、実は「1人用」だったとして、降車時に運転手に咎められたことがある。その時は、正規料金のもう1人分を追加で後払いし、事なきを得た。ドイツではそれさえも認められないのだ。)


話を私自身の観光に戻そう。
午前11時、フランクフルト近郊ハーナウに到着。初訪問。
ここは、グリム兄弟の生誕地だ。

グリム兄弟・・・。
名前は広く知れ渡っているし、誰もが幼少期に童話を読むのだろうけど、今、彼らの作品名をいったいどれくらい挙げることが出来るのだろう? 私がサッと思い浮かべることが出来るのは、「赤ずきん」と「ヘンゼルとグレーテル」くらいだ。

街の中心マルクト広場に、彼らの銅像が建っている。

しかし、この街の見所は、はっきり言ってこれくらい。あっけないくらい観光ポイントが少ない。
(この地方の伝統工芸品である金銀細工の装飾品を展示している博物館ゴルトシュミーデハウスにも立ち寄ったが、まあーつまらなかった。)

昼食を取り、午後2時頃に観光終了。フランクフルトに戻った。
以上で、2024年3月の旅行記、おしまい。