クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

2009/5/4 新国立 ムツェンスク郡のマクベス夫人1

2009年5月4日 新国立劇場
ショスタコーヴィチ ムツェンスク郡のマクベス夫人
指揮 ミハイル・シンケヴィチ
演出 リチャード・ジョーンズ
管弦楽 東京交響楽団
ワレリー・アレクセイエフ(ボリス)、内山信吾(ジノーヴィ)、ステファニー・フリーデ(カテリーナ)、ヴィクトル・ルトシュク(セルゲイ)他


 若干20才そこそこ、オペラを手がけてたった二作目でこんな凄い作品を作ってしまったショスタコーヴィチ恐るべし。
 ロシアにはプーシキントルストイドストエフスキーなどの素晴らしい文学作品があり、オペラの習作過程においてはこういうところから題材をもらってスタートしてもよさそうなのに、こんなにドロドロしたB級映画の脚本になりそうな原作を採り上げるなんて。きっと炸裂する自らの衝動的才能を、若いが故に抑えられなかったのだろう。

 生で舞台を観てみると、舞台の上というより、ピットの中のオーケストレーションがこれでもかとばかりに爆発していて、ショスタコーヴィチの面目躍如たることがよく分かる。
 もう十分ピットの中だけでも鳴り響いているのに、最強奏部分では更に金管のバンダまで加えるから、耳をつんざく勢いだ。

 要するに、ショスタコーヴィチはニコライ・レスコフの原作を踏み台にし、‘オペラを利用して’自らやりたい放題の管弦楽曲をこれでもかとばかりに書きたかったのだと思う。そしてそれは大成功した。初演後しばらくはレニングラードでも欧米でも大評判を呼んだ。かの独裁者がバッテンの烙印を押すまでは。バカなヤツめ。

 今回の演出も「墜ちゆく女の情念」がうまく描かれている。舅ボリスを殺した後、あえて部屋をきれいにリニューアルさせてセルゲイとの幸せの絶頂期間を作って見せるので、そこから落っこちる様がより一層リアルに強調されていた。
 また、舅ボリスのカテリーナに対する執拗な見張りや、ボリスに対する家来達の「くそったれ」的リアクション、ペットボトルでウォッカがぶ飲みの披露宴招待客などが実にシニカル、アイロニックで面白い。さすが、鬼才リチャード・ジョーンズ。

 音楽的にも言うこと無し。歌手達も大健闘であった。

 大満足であった私であるが、観客の中には、こんな‘危ない’オペラであるとはつゆ知らずに、素敵な調べと美しいアリアに心地よく浸りたくて劇場に足を運んだハイソな御仁方も結構いたのであろう。
あのー、いかがでしたでしょうか??(笑)

 また、中学生くらいの子供を連れていた親子も見かけたが、親からすると冷や冷やだったのではないでしょうかねえ?
 もっとも私がその子だったら、また見たいという衝動を抑えられず、夜中に親が寝静まるのを見計らって、こっそりDVD(主演はもちろんE・M・ウェストブレークね)を観ることになるでしょう。目をギラギラさせて。

 ということで、私は最終日もう一度行きま~す。やみつき。