スペインの新幹線AVEマドリード発セヴィリア行きの始発午前6時30分の電車を前日に予約。時差の関係(欧州の早朝は日本時間でお昼過ぎ)のため早起きは苦にならない。
午前5時起床、午前5時40分ホテルをチェックアウト、地下鉄駅に向かう。
新幹線が発着するアトーチャ駅までは地下鉄で乗り換え無しの約8分、余裕のはずだった。ところが6時になっても電車はいっこうにやってこない。日本だったら午前5時には運行しているであろう地下鉄が、こちらでは始発が6時を過ぎても動かないのだ。日本の常識が通用しない・・・何度も旅行して慣れているにもかかわらず戸惑うことばかり。
時刻表-そんなもんありゃしないホームの中でじりじりと焦りながら考えを巡らす。どのタイミングで地下鉄を飛び出し、タクシーに慌ててチェンジすべきか・・・。そうこうしているうちにようやく6時12分に始発がやって来た。
「良かった、間に合う。」
しかしホッとしたのもつかの間、今度はアトーチャ駅で迷宮に入る。
知らなかったが、スペイン新幹線は出発入り口と到着出口が別々で、出発の際には2階に上がらなければならないのだ。それに気が付いたのが6時25分。ダッシュで2階へ。そしたら、今度はセヴィリア行きの電車の出発ホームが分からない。信じられないことだが、掲示、表示が一切ないのだ。こんなことがあり得ようか??
係員に聞いたところ「7番線だ」というのでそこに行ってみるが、そこに電車はありゃしねえ。くそったれめ。
荷物を背負いながらばたばたと構内を走り、「よくわからんが、きっとこの電車だろう」と、とにかく勘で停車している4番線の電車に飛び乗ったら、それは「バルセロナ行き」。たまたまそこいた車掌に「セヴィリア!セヴィリア!」と大声で聞き、ようやく5番線のセヴィリア行き電車に飛び乗ったのが出発時間の6時30分ジャスト!乗った瞬間に電車のドアが締まった。私の背中は汗でびっしょりだ。
「この国は絶対におかしい!間違っている!」ぶつぶつ文句を言いつつ、一方で「こりゃブログネタだな」なんてほくそ笑んでいる自分が哀しい。
約2時間半でセヴィリアに到着。想像していたよりはるかに大都会だ。
ホテルに荷物を降ろしてさっそく街を散策。
さ~て、と。
「お~い、出てこいフィガロ。」「オラオラ出てこいカルメン。」
当たり前だが、道行く人々は普通の現代人。オペラの場面を思い起こさせるような原風景は見あたらない。せめて、せめて雰囲気だけでも、匂いだけでも、偲ばせてもらいたいのだが・・・。
時折、おみやげ屋さんに陳列してある闘牛士の衣装やポスター、あるいはフラメンコショーのポスターなどを見かけることによって、なんとなく「ふ~ん、なるほどここはセヴィリアかあ」と感じる。まあ、そんなところでしょう。
街の中心にどかーんとそびえ立つカテドラル。
ローマのサン・ピエトロ寺院、ロンドンのセント・ポール大聖堂に次ぐ世界3番目の規模だそうだ。中に入って腰を抜かす。その大きさ!壮麗さ!そして礼拝堂や祭壇を飾る宗教美術品の豊富さ!さらにはコロンブスのお墓まで!時間が経つのを忘れて堂内を徘徊した。
オペラファンなら訪れなければならないのが、旧タバコ工場。現在はセヴィリア大学法学部の校舎。こここそ、オペラ「カルメン」でカルメンが勤め、ドン・ホセと運命の出会いを果たす舞台だ。言われてみると、似た舞台装置を見たことがあるような気がする。
最後に訪れたセヴィリア美術館。大好きなムリーリョのコレクションがこれでもかというくらいの陳列。もちろん、同じくセヴィリア生まれのベラスケス、スルバランなどの絵画もずらり。いや~来て良かった!感動をいっぱいに詰め込んで、最後にいよいよ西部の娘を観る。
公演レポは次回に。