クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

私の好きな「西部の娘」

プッチーニの作品で一番好きなのが「西部の娘」だ。

(また‘通’ぶりやがって・・・なんて言わないでください。ちなみにヴェルディで一番好きなのは初心者にもやさしい「アイーダ」と公言しているのですから。)

 このオペラ、タイトルは西部の娘だし、事実、ディック・ジョンソン(ラミレス)とミニーの恋物語を中心に置いていることは間違いない。

 だが、私は本当のタイトルは「西部の男達」なのだと思う。
 そして隠れたテーマは「ノスタルジア 哀愁」だ。この「坑夫たち」の「哀愁」に着目してオペラを観ると、より一層感慨深くなる。

 なぜ、保安官ジャック・ランスを始めとする坑夫たちがラミレスを捕まえるのに躍起になっているのか、なぜ、捕まえたラミレスをつるし上げて死刑にしようとしているのか・・・彼が盗賊だからか??

 違う。
 彼は自分達のアイドル、ミニーの心を奪った許せないヤツだからだ。(そういう意味では立派な盗賊だね)

 一攫千金を狙ってゴールドコーストにやって来たはいいが、故郷や妻子への想いは募るばかりだ。その中にあって唯一の慰みがミニーの存在なのだ。

 最後の場面でミニーはジョンソンの命乞いをみんなにする。「ダメだ」と断る坑夫の連中。もし許せばミニーは彼と一緒に去っていってしまうことをみんな分かっているのだ。だから許すことができない。

 ところがその一方で、世話になったミニーには是非幸せになって欲しいとも願っている。
 その葛藤で揺れ動く坑夫の連中の気持ち。苦渋の決断で「許してあげよう」という雰囲気に徐々に変わっていく。プッチーニの美しく懐かしく、そしてどこか哀しい音楽が場面を支える。本当に本当に感動的だ。ミニーが去って、そこに残るのは「寂しさ」と「ノスタルジア」なのだ。

 2年前に新国立劇場で上演されたホモキ演出のプロダクションは、まさに私が上に述べたポイントをしっかり押さえていて、素晴らしい公演だった。(高く積まれた段ボールのせいであまり評判は良くなかったらしいが、演出家の意図は実に明快で作品の核心を突いていた。良くないと思った人は、お気の毒様と申し上げたい。)


 さて、なんで突然西部の娘の話題を書いたかというと・・・実は来週末に3泊5日の短期強行日程でスペインに行き、セヴィリアでこのオペラを観てくる予定だからだ。
 この旅行、大好きなのに滅多に上演されない西部の娘を観るために行く、と言ってもいいだろう。今からワクワク楽しみだ。