クラシック、オペラの粋を極める!

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2009/3/10 ベルリン・ドイツ響

2009年3月10日 ベルリン・ドイツ交響楽団 オーチャードホール
指揮 インゴ・メッツマッハー
マティアス・ゲルネ(バリトン
ワーグナー ローエングリン 第一幕の前奏曲
マーラー 亡き子をしのぶ歌
ベートーヴェン 交響曲第3番 英雄


 指揮のメッツマッハー、待望の初来日っっ!と思っていたのだが、なんと、ずいぶん前にN響を振ったことがあるんだって。知らなかった。

 日本ではどちらかといえば無名の部類だと思うが、ドイツでは確固たる名声を築き上げている。ハンブルグ州立歌劇場の音楽監督として、名演出家P・コンヴィチュニーとコンビを組み、数々の名プロダクションを生んだ。私もハンブルグでの「ルル」「モーゼとアロン」などのほか、現音楽監督を務めるネザーランドオペラでの「エレクトラ」「ダフネ」、直近ではチューリッヒで「トリスタンとイゾルデ」を聴き、「参った!」とばかりにすっかり彼の軍門に下っている。特にハンブルグのルルとモーゼは「これ以上の物が今後果たして聴けるのか?」というくらいの凄まじさで、鳥肌物だった。 

ただ、彼は結構くせ者だ。いわゆる王道、フェアウェイをキープしない。ま、そんなところがコンヴィチュニーとのゴールデンコンビたる所以なのだが。

 今回のエロイカも、今まで聴いた中で一番の‘軽さ’だ。テンポは速く、重苦しさのかけらもない。ヴィルティオーゾ、マエストーソとは対極である。

 メッツマッハーが行っているのは、生真面目さや苦悩といったベートーヴェンの定着イメージをはぎ取る作業だ。ベートーヴェンのイメージだけではない。エロイカのタイトルである「英雄」、献呈の対象になった「ナポレオン」、第2楽章の「葬送」・・・こういうイメージさえもはぎ取ろうとしている。

 堂々とした巨匠風のベートーヴェンを期待した人たちは戸惑ったのではないだろうか?
 事実、カーテンコールの拍手は何となくビミョーだった(笑)。だが、ブラボーも飛んでいたので、良さが分かった人もいたわけだ。

 メッツマッハーの真価を最大限に理解したいのなら、やっぱりオペラ、しかもどちらかというと近現代の作品がいいだろう。オペラの引っ越し公演を待っていてもまず来ないだろうから、やっぱり向こうに行くしかないわけですな。それだけの価値は十分あると私は思うのだが・・・。