クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

2011/5/5 チロル歌劇場

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 往年の名メゾ、ブリギッテ・ファスベンダーが芸術監督を務めるチロル歌劇場(インスブルック州立歌劇場)。この歌劇場を訪れたのは2回目だが、前回観た「魔弾の射手」では、ファスベンダー自らが演出を担当していた。どうやら歌手引退後も精力的に御活躍のようである。
 また、日本人ではアーヘン歌劇場など海外での活躍が目立つ北原幸男氏も、この歌劇場の指揮者として在籍していたことがある。
 劇場は、建物の正面外観はなかなか豪壮な造りだが、中はロビーも客席も比較的質素なごく普通の趣きだ。
 
 
2011年5月5日 チロル歌劇場
プッチーニ  西部の娘
指揮  ニコラス・ミルトン
演出  タッデウス・シュトラスバーガー
ジェニファー・シャマンディ(ミニー)、ジェラルド・キム(ジャック・ランス)、ダニエル・マグダル(ディック・ジョンソン)、ブレンデン・グンネル(ニック)、マルク・クーゲル(アシュビー)   他
 
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 2月のシカゴに続いてまたもプッチーニの隠れた名作を観ることが出来た。大好きな曲なので、こうして旅行と併せて鑑賞できるのは非常に嬉しい。(もちろん偶然じゃないよ。ちゃんと狙ってここに来たわけだけどね(笑)。)
 
 冒頭、いきなり衝撃的なシーンが挿入された。舞台奥から正面に向かってとぼとぼと手をつないで歩く男女二人。このオペラに登場する女性は端役の女中を除けばミニーだけだから、この二人がつまりミニーとディック・ジョンソンであることが一目瞭然。場面は、二人が最終幕の最後で仲間と別れ、一緒に旅立っているところだ。
 
 その二人が背後からいきなり撃たれた!
 
 撃ったのは別れを告げた鉱夫たち。なんと、二人は仲間から許されず、裏切り者として処罰されたのだ!
 銃声が鳴り響き、ミニーとジョンソンがバタンと倒れたところで前奏曲が始まり、物語が幕を開けた。いきなり観客を驚かせ、一気に物語に引き込んでいく、まさに目をみはる効果的な演出。
 
 当然、最終幕のラストシーンもそのような流れに仕組まれている。
 二人が「Addio mia California!(さようなら、私のカリフォルニア)」と歌いながら消えていくのを呆然と眺めていた鉱夫たちが、やがて憎しみの眼差しとともに彼らに銃口を向けるところで幕が降りたのだ。
 このプロダクションでは、ミニーとジョンソンをハッピーエンドに終わらせないのが最大のポイントであり、ミソ。演出的にはそれに尽きると言っていい。目の付けどころを鮮やかに変えたということで、素直に面白かった。
 
 歌手陣はほとんど全員が劇場のアンサンブルチーム。また、オーケストラも編成は中規模で、おそらく50~60人くらいといったところ。その分、響きが薄くなってしまうのが否めないが、これはもう仕方がなかろう。人口10万人程度の決して大都市ではない山間の観光都市で、オーケストラ付の自前の劇場があるだけでもすんごいことなのだ。
 
 ヨーロッパは既にサマータイムが導入されていて、日が長く、午後8時を回ってもうっすらと明るい。幕間の休憩時間中に一息いれるために劇場の外に出ると、太陽が沈む前の最後の輝きを放って、背後にそびえるアルプスを赤く照らしていた。なんて美しい光景!なんて素晴らしい街!