クラシック、オペラの粋を極める!

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2009/1/30 パリ・オペラ座 ムツェンスク郡のマクベス夫人

2009年1月30日 パリ・オペラ座(バスチーユ)
ショスタコーヴィチ ムツェンスク郡のマクベス夫人
指揮 ハルトムート・ヘンヒェン
演出 マルティン・クシェイ
ウラディーミル・ヴァネーエフ(ボリス)、ルドヴィッド・ルトハ(ジノヴィ)、エヴァ・マリア・ウェストブルック(カテリーナ)、ミヒャエル・ケーニッヒ(セルゲイ)他


 このプロダクションのオリジナルはオランダ・アムステルダムのネザーランドオペラである。この、元のプレミエ公演に行こうか、実は当時真剣に検討した。何と言っても指揮がM・ヤンソンス、オケがコンセルトヘボウだったのだ!(※ネザーランドオペラは新国立劇場と同じく、常駐オケを持たない。ネザーランドフィルやロッテルダムフィルが担当することが多いが、‘たまに’コンセルトヘボウ管が担当する。‘たまに’だ。)

 結局取り止めにしたのは、演出家がクシェイだったからだ。

 H・ノイエンフェルス、C・ビエイト、D・デーリエ、そしてクシェイ。作品をいったんぶっ壊してスキャンダラスに演出する、悪名名高い連中だ。

 ところが、このプロダクションはDVDにもなったが、私の予想に反して評判がよい。ならば見てみようと思った次第。私も色々な公演に接して、現代演出については相当慣れてきている。


 この「ムツェンスク郡のマクベス夫人」、強姦の場面もあるし、殺人の場面もあるし、作品自体かなり淫らだ。クシェイの演出、予想されたこととは言え、これらの場面はかなり露骨。子供には見せられない。ただし、そういう部分というのは演出意図のごく一部で、中心となっているのは、主人公カテリーナの鬱屈し歪んだ心の病巣である。
 そもそもカテリーナは、嫁いだものの、愛もなく、嫁として飾られているだけで、檻に閉じこめられ、外から覗かれている状態。これでは欲求不満とストレスが溜まるだけであろう。物語の進行に必然性が加わる鋭い解釈だ。クシェイ、なかなかいいではないか。


 歌手陣では、エヴァ・マリア・ウェストブルックの独り舞台。歌唱の実力もさることながら、色気を全面に押し出し、悪女カテリーナを見事に演じている。その艶めかしい舞台姿に観衆(私も含め)は目が釘付け、ドキドキしっぱなしだ。この歌手、私は好きな歌手としてかねてより大注目している。長い名前であるが、是非覚えておいて欲しい。
 
 パリ・オペラ座管弦楽団ショスタコーヴィチの音楽を手中にしてホール一杯に鳴り響かせている。指揮者ヘンヒェンのタクトと併せて素晴らしい音楽を創り上げた。

 今年の5月に、今度は新国立劇場でこの作品が上演される。めったに上演されない珍しい作品がわずか半年で2つも見られるなんて!タコファンとしては本当にうれしい。

 新国立劇場のために、予習で上記のオリジナルプロダクションDVDを買う人も多いだろう。その人達はきっと妖艶なウェストブルックにクラクラしてしまうだろうな。