クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

2021/11/25 N響

2021年11月25日   NHK交響楽団   サントリーホール
指揮  ファビオ・ルイージ
フランチェスカ・デゴ(ヴァイオリン)
パガニーニ  ヴァイオリン協奏曲第1番
チャイコフスキー  交響曲第5番


ファビオ・ルイージの首席指揮者決定の発表後、初めて聴く。この日はダブルヘッダーで演奏会のはしごだったが、ルイージへの期待が気分を高揚させ、疲れなんか物ともせずに会場に向かう足取りは軽やかだった。

「新時代の幕開け」
それを大いに予感させる演奏だ。P・ヤルヴィとのコラボレーションとは、また一味違う。
ヤルヴィのアプローチは、どちらかというとオーケストラに対して様々な仕掛けを放ち、丁々発止のやりとりをしながら化学反応を起こさせるというものだった。それはそれで毎回とてもスリリングでおもしろかった。

ルイージの場合はどうだろう。
これまで彼のタクトによる音楽を聴いてきた感じでは、彼には明確な指揮者のカラーというのがあり、オーケストラはそのカラーに染まっていく。どうやら我々は、そうした色付き、色合いの程を楽しむことになりそう。そんな予感がする、そんな気配を感じさせる今回の演奏であった。

爽快で、色彩豊かで、情景がクリアなチャイ5。こんなチャイ5、今までに聴いたことない。そこに、チャイコにありがちなロシアの大地の冬枯れた景色は見当たらない。
だからといって、「イタリア人指揮者だからな」と一束にしてしまうのは少々浅はかだろう。上にも書いたとおり、これはルイージのカラーなのだ。

このルイージのカラー。もしヒントがあるとしたら、それはきっと音楽に対する情熱ではないかと思う。ということで、これから益々熱い演奏が繰り広げられることになりそうだ。


コンチェルトを演奏したデゴ。
パガニーニを弾くということは、兎にも角にも超絶技巧が前面に出るということ。
ただしデゴの場合、単なるテクニックのひけらかしではなく、明るく伸びやかな旋律をしっかりと聴かせようとする意図は感じられた。

それにしても、パガニーニの作品って、ほんとパッパラパーだね(笑)。

2021/11/25 ポール・メイエ&カルテット・アマービレ

2021年11月25日  ポール・メイエ&カルテット・アマービレ  東京オペラシティコンサートホール
ポール・メイエ(クラリネット)、カルテット・アマービレ(篠原悠那(1stVn)、北田千尋(2ndVn)、中恵菜(Vla)、笹沼樹(Vc))
モーツァルト  クラリネット五重奏曲
ブラームス  クラリネット五重奏曲


7月に鹿児島に行って初めて聴き、見事なアンサンブルにすっかり魅了されたカルテット・アマービレ。弦楽四重奏の楽しさを今さらながらに教えてもらい、またいつかどこかで聴きたいと思っていたところ、ここに世界的な名手との共演という絶好のチャンスが巡ってきた。
二日前に東京佼成ウインドオーケストラとの共演で、自分がイメージしていたクラリネットサウンドの概念を覆してくれたポール・メイエ。まさに一期一会の公演だ。

プログラムには、個人的に思い入れがあるブラームスクラリネット五重奏曲が入っている。
何を隠そう、私は大学生の時、この曲を弾いたことがあるのだ。

この時クラリネットソロを担ったのは、所属していた大学オーケストラの第一クラリネット奏者だった同級生の女の子。木管楽器群のリーダー的存在だった。その彼女が声を掛けて団内屈指の実力を持つヴァイオリン、チェロ、ヴィオラの腕利きを揃えると、なぜか大学に入ってからヴァイオリンを始めてたかだか2、3年のこの私をセカンドヴァイオリン・パートとしてメンバーに誘ってくれたのだ。これは嬉しかった。私は大いに意気に感じ、発奮した。
発表の場は、合宿時に開催される団内演奏会という身内向けのものだったが、私は足を引っ張っては申し訳ないと思い、必死に練習したっけ。この時私は、室内楽の楽しさとブラームスの奥深さを確かに発見したのだった・・・。

・・・すまん、個人的なことをツラツラと書いてしまった。つい懐かしさが溢れてしまった。本公演の話に戻そう。

ダイヤモンドのような煌めきの演奏だった。アマービレの実力も、メイエの実力も、共に承知していたのに、完成度の高いアンサンブルに改めて唸った。そして、クラリネットの音色というのは、こんなにも弦楽器と溶け合うのだなと、驚嘆した。

特にゾクゾクしたのが、ピアノあるいはピアニッシモのハーモニーの中から浮かび上がるクラリネットの、朝焼けのような美しい輝きである。

何なのだ、あの神々しい瞬間は!
魔法。絶対に魔法。さもなければ奇跡。

アマービレの皆さんが、メイエの単なる伴奏にならないところもさすが。
もちろん全員がメイエの音に集中しているのだが、演奏しているのはあくまでも五重奏。5つの音がきちんと作品の粒となり、構成力となって、音楽として成立しているのである。だから、聴き手はソロの名人芸と作品そのものの魅力の両方を同時に堪能できたのであった。

室内楽の真髄、そして神秘を体験できた貴重なアフタヌーンだった。

2021/11/24 新国立 ニュルンベルクのマイスタージンガー

2021年11月24日  新国立劇場
ワーグナー   ニュルンベルクのマイスタージンガー
指揮  大野和士
演出  イェンス・ダニエル・ヘルツォーク
管弦楽  東京都交響楽団
トーマス・ヨハネス・マイヤー(ザックス)、ギド・イェンティンス(ポークナー)、アドリアン・エレート(ベックメッサー)、シュテファン・フィンケ(ヴァルター)、林正子(エヴァ)、山下牧子(マグダレーネ)、伊藤達人(ダーヴィッド)    他


第一幕前奏曲を聴きながら、色々な思いが巡ってきて、それら一つ一つを噛み締める。

思えば昨年2月、この新演出プロダクションを鑑賞しようとしてドレスデン行きを目指したというのに、冬の嵐に阻まれ、鑑賞が叶わなかったのである。(ザクセン州立歌劇場などとの共同制作だった。)

捲土重来を期した東京でのプレミエは、本来ならドレスデンの上演から4か月後に幕が開くはずだった。
それが、コロナで延期。
今年の8月、先駆けて東京文化会館で上演されるはずだったのに、これまたコロナで中止・・。

ようやく・・ようやくここに辿り着いたわけだ。

それ以外にも、「マイスタージンガーの第一幕前奏曲は、大学時代に所属した管弦楽部で私も弾いたっけなー」とか、「私が観光ではなくオペラを観るために初めてウィーンに行った時、そこで鑑賞したのが『マイスター』だったよなー」とか・・・。

そうした様々な思いが巡り重なったからであろうか、前奏曲の響きが私のハートをズンズン直撃し、感傷で押し潰されそうになる。まだ第一幕の前奏曲だというのに・・・。


大野和士がリードする都響の演奏がいい。
本場ドイツやウィーンなどの一流歌劇場公演の演奏と比較するつもりはない。そんなことをしたってしょうがない。しっかりとした、どっしりとした、あたかも大河が流れるかのような滔々脈々たる演奏。
ああ、これはワーグナーだ。私の大好きなマイスタージンガーだ。なんて素晴らしい音楽なんだろう。

もう、それだけで十分だった。

驚くべきは、これだけの長丁場の演奏で、緩んだり、バテたり、ガス欠になったりすることなく、最後までパワーが持続したことである。
もちろん大野さんのリードのおかげもあるだろうし、都響の皆さんの実力やペース配分のおかげというのもあるだろう。
だが、私は思う。
この活力を生み出す源泉は、ワーグナー作品そのものに秘められている。誰が何と言おうとも。


歌手について。
ダントツに素晴らしいのはA・エレート。現代最高のベックメッサーの面目躍如。他の歌手が「◯◯役を演じ、歌っている」という印象を抱かせるのに、エレートだけは役そのものが浮かび上がる。
ザックスを歌ったT・J・マイヤーも十分に立派だった。今回が初ロールだったとのことだが、これからはあちこちでこの役で勝負できるだろう。

エヴァ役の林さんは、どこに基準を置くかで評価が変わってくる。
「日本人として」とか「今回の新国立劇場において」とかであれば、これ以上無いくらい素晴らしい。ドイツ語の違和感もほとんどない。
だからといって、じゃあ彼女が上記のマイヤーのようにこの役を引っ提げ、欧米の一流劇場で歌えるかと言えば、やっぱり難しいと思う。残念ながら、まだ突破できない壁が存在しているように見える。


演出について。
「劇場の舞台裏」に焦点を合わせ、読み替えた現代演出。ザックスは劇場のインテンダントで、ポークナーは同劇場の有力スポンサーという設定。その着眼点は面白いと思うが・・・。
そうやって視点を変えれば変えるほど、物語やセリフとの齟齬、乖離がどうしようもなく際立ち、収集がつかなくなる。どうして劇場インテンダントが、ハンマーを持って靴を鍛えるのか? 説明がつかず、単純に破綻している。

ただし、それでも私は「失敗作」という烙印だけは押したくはない。なぜなら、少なくともそこに演出家の探求の足跡が見えたからである。

例えば、衝撃的(?)なラストシーン。ワルターが晴れてマイスターになったという証である彼の肖像画エヴァがブチ破り、ワルターと手を取り合って立ち去るという演出上の解釈。
明らかにハッピーエンドを覆す挑戦的な仕掛けで、人によっては嫌悪感を催すかもしれない。

でも、私は「こういう結末もあり」だと思った。
エヴァは婚約者を自ら選べない贈呈品なのである。こんなの現代社会において、女性の自立という観点上、ありえない。そこにメスを入れたということ。
これこそがまさに現代演出の意義であり、舞台芸術の存在価値なのだ。
私たちは今という時代を、社会を、人生を、考え見つめなければならない。たとえその演出に好き嫌いがあるにしても。


もうひとつ、最後に恨み節を言わせてほしい。
ドレスデンザルツブルクでの原演出版を見ていないが、間違いなく、確実に、大幅変更が施されている。
大合唱が使えないこと。出演者同士に無理やり間隔を設け、自然な演技が阻まれたこと。

出来上がったものは、完全に妥協の産物だった。それは、芸術分野において本来絶対にあってはならないものなのだ。

私は恨む。コロナの大馬鹿野郎め。とっとと死滅しやがれ。

2021/11/23 東京佼成ウインドオーケストラ

2021年11月23日  東京佼成ウインドオーケストラ  東京芸術劇場
指揮・クラリネット  ポール・メイエ
ベルリオーズ  序曲ローマの謝肉祭
ベールマン  クラリネットのための軍隊協奏曲
ドビュッシー  クラリネットのための第1狂詩曲
サン・サーンス  交響曲第3番 オルガン付き


世界的なクラリネット奏者メイエが指揮とソロ演奏を担ったコンサート。メイエは以前にTKWOの首席指揮者を務めたこともあり、相性はバッチリといったところ。

そのメイエ。
私はこれまでにレ・ヴァン・フランセのメンバーとしてのアンサンブル演奏しか聴いたことがなく、ソロを聴くのは実質上初めてだったが、いやーもうホントびっくりするくらい上手い。これが本物のクラリネットの音なのだね。じゃあ、これまで俺が耳にしていたクラリネットはいったい何だったわけ?
なんて思わずにはいられない極上の逸品なのであった。

コンチェルトでいつも思うことなんだけど、例えばヴァイオリン協奏曲の時、トゥッティ奏者として伴奏しているオケのヴァイオリンの皆さん、ソロ奏者に対してどんな思いを抱きながら演奏しているのだろうか。

何か参考になることがあるかな、採り入れられるものを見つけたいな、なんて思ってる?
自分とのスケールの違いを感じて愕然としたりしない?
それともトゥッティ演奏の仕事に徹し、淡々黙々と演奏してる?

実に興味深い事柄で、インタビューして聞いてみたいくらい。

TKWOの木管奏者たちの様子を伺ってみると、すごく素直に喜びを感じている様子だし、ワクワク感が溢れている。そして、それが演奏にも現れている。
しかもメイエめちゃくちゃカッコいいときているから、女性奏者の皆さんはソワソワしちゃったりして(笑)。

いずれにしても、メイエの演奏、堪能した。私は明後日もう一回、今度はカルテット・アマービレとの室内楽公演に行く。

メイエが指揮したサン・サーンスの「オルガン付き」については、指揮者が紡いだ音楽というより、管弦楽版を吹奏楽版に仕立てたアレンジの巧妙さに感心した。


さて、本公演の前、11月1日付けで、東京佼成ウインドオーケストラが一般社団法人となることが発表された。つまり、宗教法人立正佼成会から独立し、自主運営していくということである。

これはちょっと心配な件である。
これまでは宗教法人に支えられていたが、今後はそうした補助が受けられない。さらなる飛躍を目指すといえば聞こえがいいが、財政面で厳しくなり、活動が縮小してしまわないか。

TKWOは日本が誇るプロ吹奏楽団だ。私も小学校高学年から中学、高校とラッパを吹いていたので、このオーケストラは憧れだった。特に、吹奏楽コンクールの課題曲の模擬演奏録音テープにはお世話になった。
同様に、この団体に憧れている中学生高校生のブラバン生徒はたくさんいるだろう。「東京佼成に入団したい!」という夢を抱いている若者だっているに違いない。

これまでのように、これまで以上に、日本の吹奏楽をリードしていってほしい。どうかそういうバンドであり続けてくれますように。

2021/11/21 米沢

山形市内のホテルをチェックアウトし、帰宅がてら、米沢に立ち寄る。目的は米沢牛ランチである。
その前に、せっかくなので、城下町の名所を訪ねる。

駅から1.8キロくらい離れている上杉神社。バスを利用するのなら、一日乗り放題の切符がお得という情報をみつけた。
ところが、いざバス停に行ってみると、運行時間なんてせいぜい一時間に一本程度。観光客にとってどれだけ使い勝手が良く、お得なのか、全然よく分からない。

まずはその上杉神社へ。謙信公が祀られているという。

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上杉謙信
越後の戦国武将で、川中島で甲斐の武田信玄と激戦を繰り広げたことで有名だ。
謙信公自身は、ここ米沢とは何の縁もゆかりもない。にも関わらず祀られているのは、後継ぎの上杉景勝関ヶ原の戦いで敗れた後に厳封され、米沢に拠点を移し、以後、上杉家のゆかりの地になったから。

なんだかなあ。それでいいのかね。謙信さんはどう思っとるのだろうねえ。
普通に景勝公を祀ればいいじゃんと思うのだが。単にその名にあやかりたいだけなんじゃないの?
ま、野暮な話か。すみません。


神社から更に西に1.2キロ歩き、歴代の藩主が眠る上杉家廟所へ。
上杉謙信の遺骸も収められ、奉ってあるが、これもまた明治になってから移されたんだとさ。杉木に囲まれた敷地内はとても荘厳な雰囲気が漂っていて、なかなか良い。

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さて、ここまで来たはいいが、帰りが大問題である。
時間的にバスはアウトだし、タクシーなんか全然流れていないし。
仕方がないので、復路の約3キロを歩くことにした。運動してカロリーを消費させておけば、その分ランチも美味くなるというわけだ。

レストランは、事前にリサーチし、あらかじめ目星をつけていた。
40分も歩いてようやく辿り着いた目的のレストラン、行ってみたら・・・。
「本日は予約で満席です」
ガクッ・・・。

続いて、リサーチで「この店もいいなー」と思っていたところに行ったら・・・。
「大変混んでいるので、お食事を提供できる時間がまったく見通せません。1時間くらい待てます?」と言われ、再びあえなく断念。

そのお店のすぐ近くにあったレストランを訪ねても、やはり断られた。
ま・じ・か・・・。

恐るべし米沢牛
緊急事態宣言が明け、人々が観光に動き出した中、こうして米沢にやって来る連中は、俺らを含め、皆目的は一緒ってわけか。ましてや日曜日だしなあ。

こうなってくると、「もう、どうだっていい」気分がグングン沸いてくる。
そもそもオイラは、味を求めて彷徨ったり、並んだりするのが嫌い。そこまでしたいとまったく思わない。

弟くんに「もうやめる? 蕎麦でも食いに行こか?」と話を向ける。
しかし、簡単に諦めきれない我が弟。彼がわざわざ一日年休を取ってまで兄の誘いの旅行に付き合ったのは、温泉に加えて「米沢牛」に魅力を見出したからだ。高級ブランド牛から蕎麦に変更じゃあ、そりゃ簡単に納得できんわな。

結局、付近で「米沢牛」の看板が出ている店を手当り次第に当たることに。そこから更に2軒目でようやく席に通してもらった。そこは「しゃぶしゃぶ」がメインのお店だった。本当はステーキが食いたかったが、我が儘は言えない。予約しておけばよかったのだな、と後悔しても、あとの祭り。


山形二泊三日の旅。最後の最後にちょっとした落とし穴にはまってしまったが、まあ仕方がない。いいでしょう。これまで海外旅行で、シャレにならないハプニングを何度も経験している自分からすれば、こんなの全然大したことない。

この3日間、天気に恵まれた。山形地方はその前まで曇りがちだったし、月曜日以降の天気予報も雨・曇りマークが並んでいる。旅行のタイミングとしても、絶好だった。

弟くんは今日からまた仕事。私の休暇はもうちょっと続く。

2021/11/20 山響

2021年11月20日  山形交響楽団   山形テルサホール
指揮  阪哲朗
辻彩奈(ヴァイオリン)
芥川也寸志  弦楽のための三楽章「トリプティーク」
シベリウス  ヴァイオリン協奏曲
ブラームス  交響曲第4番


若くして渡欧し、ドイツ各地の中堅歌劇場の専属指揮者や首席指揮者を渡り歩き、オペラ指揮者として鍛え上げられた阪さん。
実は私も、現地(ドイツ)で彼が振るオペラを観るつもりで計画を立てたことが、2度ある。
一つは、ベルリン・コーミッシェオーパー。演目はR・シュトラウスの「ナクソス島のアリアドネ」だった。もう一つは、レーゲンスブルク市立劇場で、ヴェルディの「シモン・ボッカネグラ」(だったかな?)。
いずれも予定を変更してしまい、鑑賞が叶わなかった。特にコーミッシェは、チケットまで手に入れていたのに旅行そのものが中止になってしまい、残念だった。
 
もっとも、コーミッシェのチケットを買った当時、私は阪哲朗という指揮者を知らなかった。大好きなシュトラウスのオペラをやっているので観ようとしたら、たまたま阪さんだっただけ。
もっと言うと、事前リサーチでコンダクター「BAN」とあり、「ベトナム系の人??」と思ったというオチ付きである。
 
日本国内での公演でも、私が聴いているのは新国立劇場の「ホフマン物語」や二期会の「イェヌーファ」など、オペラが多い。今回16年ぶりに彼のタクトによる演奏を聴く。
 
いやはや、めっちゃ全身使って振る指揮者である。その身振りは本人は大真面目なんだろうけど、何だかユーモラス。音出しのキューサインも、拍子取りも、表現の引き出しも、ぜーんぶやるので、とても忙しそう。
まあそれが指揮者の仕事なわけだから、当然といえば当然かもしれないが。
それに、そういうのも含めて、個性であり、確立された独自の指揮法というわけだ。
 
おかげで、音楽は丹精込めて作られ、指揮者が「こうしたい」という内容がすべて表出されるので、目にも耳にも非常に分かりやすい。相当に練り上げる感じだが、こういうタイプの指揮者こそ、中堅どころのオーケストラにとって、うってつけなのかもしれない。そう思った。


さて、この日のハイライトは、間違いなくコンチェルトであった。
若き女流奏者、辻彩奈さん。その目覚ましい活躍ぶりで注目のヴァイオリニストだが、私は今回初めて聴いた。
シベリウスの作品を完全に掌握しているし、演奏も完ぺき。2016年モントリオール国際音楽コンクールで第1位を獲得した時にファイナルで演奏した曲とのことで、なるほど納得。
音の粒が大きく、楽器が本当によく鳴る。堂々とした演奏スタイルも、いかにもソリストっぽく、かっこいい。うーん、素晴らしい。
良いもの聴かせていただきました。わざわざ山形まで来た甲斐がありました。


会場の山形テルサホールは、800席ほどの中規模コンサートホールで、同じく中規模オーケストラである山響の本拠地としては、ちょうどいい感じ。音響は悪くはないが、音が客席にストレートに届くので、丁寧に演奏しないとやや耳障りになる印象。

それにしても、しかし・・・。
市立のテルサホールのすぐ真隣りに、同じくクラシック公演も可能な県立のやまぎん県民ホールが並んで建っているのは、それっていかがなものか。何だかいかにも二重行政による無駄な箱物建設のような気がしないでもないが・・・。

2021/11/20 山形(山寺)

早朝の温泉にもしっかり入り、健やかな朝を迎えた二日目。ゆっくりのんびりくつろいで・・・といきたいところだったが、残念ながらそうはいかず。私はネットで山形市方面に戻るバスの時刻表とにらめっこしながら、「さてとどうしようか・・」と頭を悩ませていた。

本日は、2022年度シーズンの東京フィル定期会員券のネット先行販売日であった。
売出時間の午前10時をどこの場所で迎えるかは、私にとって大きな問題である。出来ればWi-Fi 環境が整っている場所にいたい。別に電話回線でも問題はないが、それでも移動中とか電波環境が良くない所とかにはいたくない。つまるところ、こうした検討が宿のチェックアウト時間にも関わってくる。

「うーん・・・」と考えている横で、弟くんが「くっくっ・・・」と笑っている。
「どうだっていいじゃん(笑)」
いやいや、どうだってよくないんだよ。オレにとって重要なことなの。知ってるだろ、兄貴がどういう人間かってのは。

結局、8時20分にホテルをチェックアウトし、10時前に山形市内に入って、本日宿泊予定の山形駅前のホテルに立ち寄る。大きな荷物を預かってもらいつつ、そこでホテルのFree Wi-Fiを使わせてもらう。我ながら完璧な立案(笑)。
こうして無事にミッションを終わらせたところで、ようやく観光へレッツゴー。


本日は、「山寺」と呼ばれている宝珠山立石寺に行く。山形駅から電車で約20分。
パワースポットとしても有名で、1000段の石段を登りながら拝観する観光名所だ。

天気は快晴。コロナの状況も落ち着いたので、多くの参拝者が訪れ、賑わっている。

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石段登りは確かに大変だが、とにかく景色が美しいので、苦しいほどではない。頑張って登ったご褒美には、絶景が待っている。

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山の麓付近では、ぎりぎり紅葉も間に合って、きれいな紅葉に癒やされた。

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