指揮 トーマス・ヘンゲルブロック
合唱 バルタザール・ノイマン合唱団
今週はバッハ・ウィークだ。一週間内にバッハばかりの3公演を聴いたのは、人生で初めて。
ヒラリー・ハーンの無伴奏だけで十分「バッハ聴いた」感に満ち足りたし、マニフィカトはまったく知らない初物なので、何を隠そう気が引けた部分もあったのだが、それでもやはりヘンゲルブロックとバルタザール・ノイマン合唱団というのなら、是が非でも駆けつけなければいけない。
それにしても、1か月前のNDRエルプフィル来日公演。
いくら退任が決まっているとはいえ、最後のシーズンの引っ越し公演なんだから同行して振ってほしかったヘンゲルブロック。あっさりキャンセルしたかと思ったら、その1か月後のN響に客演というのだから、「なんとまあ・・」という感じである。
挨拶代わりの一曲目、組曲第4番は、ちょっと微妙だった。
あのN響から普段とはまるで違う響きを導き出していたということなら、評価に値する。
一方で、ヘンゲルブロックの音楽的な力量からすれば、「もっと突っ込めたんじゃないのか」という気もする。
実際ヘンゲルブロックが、出来にどの程度満足したのかはわからないが、妥協の産物のような気がしなくもない。
プログラムにヘンゲルブロック自身のインタビュー記事が掲載されていて、「自分はバロック音楽の専門家ではないのだが、幅広い音楽を手がけている活動状況が伝わっていないのではないか。」と語っている。なんだかそういうことで、あえてシェーンベルク編曲作を持ってきて、それが見事に裏目に出てしまった印象ありあり。
まあこれはあくまでも私個人の感想ですから、あしからず。
ヘンゲルブロックらしさを捉えることが出来、「バッハ聴いた」感に包まれることが出来たのは、やはりというか、手兵の合唱団が加わったメインのマニフィカトだ。
合唱はとてもピュアで、なおかつ素朴。簡素な響きの中に宗教的な雰囲気が醸し出されていた。
いったん演奏が終了した後、まるでアンコール曲のように、クリスマス・オラトリオのコラール曲が加わったことで、「ああ、クリスマスだな。12月だな。」と、ほんわかした実感を懐きつつ、帰路に着いた。
ところで、NHKホールの前の歩行者道は、いかにもクリスマス用の真っ青なイルミネーション。きれいっちゃきれいだが、ギョッとするくらいのけばけばしさ(笑)。