なんという完成度の高さ! 丹念で理知的な彫琢。バッハらしく壮大な広がりがあり、奥が深い。
主観性と客観性、抑制と開放の両方を併せ持っていて、極めて多面的である。また、楽章ごとにストーリー性があり、表現は徹底的に磨かれている。
とにかく、演奏の中にすべてが詰まっているのだ。バッハの作風、エッセンス、普遍性、それから演奏者の解釈とアプローチ・・・。
それは、バッハという大作曲家に対し、究極の畏敬の念を込め、身に付けた技術、学んできた物、年月による経験などのすべてを注ぎ、捧げているからだろう。
かつての天才然としたクール・ビューティーは、今や超然とした孤高の絶対的存在に到達しようとしている。
まだ若いのに・・。(ママさんにはなりましたが)
これ以上というのがもはや想像も出来ないわけだが、いったいこの先、彼女はどこに向かっていくのであろうか。どこまで行くのであろうか。
もちろんこれからもずっとヒラリー・ハーンの演奏を追い求めていくつもりだが、楽しみでありつつ、なんだか末恐ろしい・・・。