2018年4月27日 フランクフルト歌劇場
指揮 ティート・チェッケリーニ
演出 ダヴィッド・ヘルマン
ゴードン・ビントナー(アレクサンドル・ペトロヴィッチ)、ヴィンセント・ヴォルフシュタイナー(フィルカ・モロゾフ)、ヨハネス・マルティン・クレンツレ(シシュコフ)、アイ・グルーチュケルト(スクラトフ) 他
私はヤナーチェクのオペラが結構好きなので、これは嬉しいことだ。それに何よりも日本ではこういう機会はまずないことなので、あくまでも結果論として「良かった」と、思っている。
そもそもこの「死者の家から」、これまで日本で上演されたことがあるのだろうか。
ないんじゃないか? ひょっとして。
ただし、ほとんど上演されないというのは、実は日本に限らず本場欧州でも同じだ。
「死者の家」というのは、死刑囚が入っている刑務所のこと。暗くて、陰湿で、救われないお話。物語として、興行として、取っつきにくいのは、ある意味当然。
また、モノローグの場面が多いので、劇的な展開、起伏がない。
マニアック、上級者向けと言っていいだろう。
この作品を好きになれるかどうかは、ヤナーチェク独特の旋律、響き、節回しに慣れ親しんでいるかどうか、そこがポイントだと思う。
さて、今回の演出であるが、正直、明確に意図を汲み取ることができなかった。
読替えであることは間違いなく、刑務所内の出来事というよりも、反政府もしくは反社会集団、あるいはカルト集団内での出来事のように仕立てられている。
そこからは、様々な陰湿的暴力、いじめが展開するのだが、まあはっきり言って、見ていて気持ちのいいものではない。
まあいい。
それよりも、滅多に聴けないヤナーチェクの音楽を聴くことが重要だ。
指揮者のチェッケリーニは、それまで知らなかったが、結構好感を持った。タクトを見ていると、勢いがあり、単にブンブン振り回しているようだが、音を聴いていると、交通整理がよく出来ていて、場面や登場人物によって響きを巧みに使い分けている感じがした。
まだ若そうなので、これからますます活躍が期待されるだろう。
歌手たちは、皆一定の水準を確保していたが、特に鮮烈な印象を与えた人は残念ながらいなかった。
でも、考えてみれば、それでいいのかもしれない。
このオペラの主役は、実は「服役囚たち」といった一括りなのだから。