指揮 アレクサンドル・ラザレフ
山根一仁(ヴァイオリン)
チャイコフスキー ヴァイオリン協奏曲
ラザレフのタコ5はてっきり以前に聴いたことがあると思っていたが、よくよく調べてみたら未聴であることが分かった。慌ててチケットを購入。その後、チケットは完売になった。危なかった。
演奏は素晴らしかった。行って良かった。絶品中の絶品。
ラザレフのショスタコーヴィチが悪いはずがない。名演になることは分かりきっていたが、それでもやっぱり唸ってしまった。
低弦の響きがずしりと重い。全体の音量は大きく、フォルテの時の迫力は圧巻だが、対称を成すかのようなピアニシモの音がピンと張り詰めていて、冷酷さを漂わる。これは一昔前のロシアのオーケストラの音だ。
全体を通して強靭。ただし、決して荒っぽくなく、タッチは繊細。このことについて、楽章が変わっても一貫している。
これぞラザレフの厳しい要求によって編み出されたラザレフの音なんだ。ラザレフでしか出せない音だ。
オーケストラのサウンドを一変させる力。
オーケストラの持ち味をうまく引き出すことができる指揮者は多い。P・ヤルヴィも、カンブルランも、J・ノットも、これに長けている。
だが、オーケストラのサウンドを一変させることができる指揮者はそうはいない。
それができるのがラザレフ。
ラザレフをまだ聴いたことがないというアナタ。
悪いことは言わん。聴いておけ。
この世界はね、後になって「ああ、あの時聴いておけば」と後悔することがよくあるんだから。
それからね、ラザレフのコンサートに行くと、もう一つ面白い光景が必ず見られる。
これまでの鑑賞記でも毎回のようにコメントしているけど、彼のカーテンコール時のステージマナーは本当に本当にナイス。やっぱりラザレフは最高なのだ。