2024年12月14日 NHK交響楽団 NHKホール
指揮 ファビオ・ルイージ
合唱 東京オペラシンガーズ
クリストファ・ヴェントリス(テノール)
リスト 交響詩「タッソー」、 ファウスト交響曲
プログラムの両曲ともゲーテの戯曲につながっているリストの作品である。
戯曲というのは演劇のための脚本であり、音楽を伴うことで成立する歌劇とは異なる物だが、こうしたドラマ性を帯びた作品の演奏は、ルイージは作り方が上手いと感心する。
ルイージが見つめているのは、あくまでも楽曲でありスコアであって、アプローチは普通の交響曲や管弦楽曲と一緒、戯曲そのものを殊更に意識していないかもしれない。
だが、作品の中に物語の背景みたいなものや感情の起伏があると、それを目敏く発見し、すかさず演奏の中に落とし込んでいるのは、聴けば明白だ。
そこらへんは、きっとオペラ指揮者としての長年の経験が物を言っているのだと思う。
本人がそれを肯定するかどうかは分からないけど。
そうした音楽作りは、我々聴き手の作品理解にも大いに助けになる。ファウスト交響曲は、普通に聴くと何だか冗長だし、最後の合唱とテノール・ソロはいかにも付け足しの感じがする。
でも、ルイージによる「ドラマ化した音楽」のおかげで、あたかもオペラを観終えたかのような充足感を味わうことが出来たのであった。
ふと気が付いたのだが、ルイージのタクトがいい感じで柔らかくなっている。
昔はもっと激しかった。もちろん今でも情熱的な部分は相変わらず保持しているが、腕や肩の力みが抜けている。
要するに、円熟しているということだろうか。もう65歳だもんな。
N響の首席指揮者に就任して3シーズン目。どうやら良好・緊密な関係を維持している模様。
ルイージはこれまでに沢山のオーケストラ、歌劇場のポストを歴任しているが、中には事実上の喧嘩別れみたいな形であっという間に退任したこともあった。
N響を振っている彼を眺めると、気難しさとはまったく無縁の感じがするのだが。
それとも、これまた要するに円熟のおかげなのであろうか・・・。
最後に、テノール・ソロを務めたC・ヴェントリス。今回、代役による登場だ。
わずか5分くらいの出演を2回という契約で、わざわざ日本においでくださいました。
ご苦労様なのか、「おいしいお仕事でございました」なのか(笑)。
カッコいいヘルデン・テノールとしてバイロイトをはじめ各地の歌劇場を飛び回っていた彼も、さすがにちょっとベテランっぽくなってきたね。