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2014/10/24 日本フィル

2014年10月24日  日本フィルハーモニー交響楽団   サントリーホール
指揮  アレクサンドル・ラザレフ
チャイコフスキー   弦楽セレナーデ
 
 
 やってくれたぜ、日本フィル。
 メインのショスタコ4番で、このオーケストラで望み得る極限の演奏が出た。日本フィルはラザレフというこれ以上ない最高の指揮者を得て、ショスタコーヴィチ演奏の規範を示した。
 
「叫びの演奏」とでも言おうか。まるで握った拳の力、歯を食いしばる力を貯めに貯め込み、それを一気に爆発させるかのようだった。各奏者はその強烈なエネルギーを容赦なく楽器に注ぎ込んだ。
 狂乱する弦楽器、炸裂する打楽器、絶叫する金管楽器、咆哮する木管楽器・・・。オーケストラの音は鋼鉄のように冷たく、そした固かった。トロンボーンファゴットコールアングレバスクラリネットの各ソロ、絶望のどん底のようにずしりと重い音だった。
 
 そうなのだ。このように演奏されるべきなのだ。このように演奏しないと、ショスタコーヴィチがなぜこの曲をお蔵入りさせてしまったのかが分からない。作曲家に命の危険が迫った事の重大さが伝わってこない。そういう深刻な曲なのだ。ラザレフはそこら辺をよーく判っている。
 
 私自身も、タコマニアとしてこういう演奏を聴きたかった。こういう演奏をずっと待ち望んでいた。堂々と自信に満ち、上から目線で「こういうことだ。分かったか!」と言い下すような演奏だった。
 
 第一楽章の中に現れるつんざくような大音響に包まれながら、私は「あ゛ーぁ!!あ゛っ、あぉっ・・・うわぁぁぁ~!」と気が狂ったように吠えていた。その時、完全に冷静さを失い、正常な思考回路がぶっ壊れた。体内の血が逆流して、このまま死ぬかと思った。「それならそれで、ま、いいか」とも思った。
 
 さっきからこうしてずっとショスタコの演奏を絶賛し続けているが、実は前半のチャイコの弦セレも超が付く名演だった。
 最高だ。日本フィルの皆さん、皆さんは最高だ。
(あのー、皆さん、「今回すごいことやっちゃった」っていう自意識、あります??(笑))
 
 これを日本フィルがやってのけたというのが本当に感慨深い。
 かつて日本フィルといえば、「プロオケとして、ちょっとアレだなあ・・」みたいな感が漂うオケだった。こんなことを言うのは失礼で申し訳ないが、だって本当に下手だったのだから。
 
 最近の日フィルは違う。ラザレフを呼んでロシア物をやる。インキネンを呼んでシベリウスをやる。ガツンと筋が通っているのだ。そうやってラザレフやインキネンからホンモノの魂が注入されていき、結果として本気で主張し、勝負するオケになってきた。
 私の師匠Kさんは言う。「今、日本フィルから目が離せない。」と。そのとおりである。「同感!」と思っている人も多いだろう。
 
 この秋、ブロムシュテットN響、スクロヴァチェフスキの読響と、黄金コンビによる名演が生まれた。ラザレフの日本フィルがこれに続いた。かつて東響がスダーンと組んだ時、都響がインバルとマーラーに挑んだ時、世界のどこにも負けないオーケストラに変貌した。
 
 日本のオーケストラを侮るなかれ。決して。絶対に。