2024年12月10日 ドイツ・カンマーフィルハーモニー・ブレーメン 文京シビックホール
指揮 パーヴォ・ヤルヴィ
樫本大進(ヴァイオリン)
シューベルト イタリア風序曲
ベートーヴェン ヴァイオリン協奏曲
シューベルト 交響曲第7番 未完成
モーツァルト 交響曲第31番 パリ
本公演が行われる少し前、指揮者のP・ヤルヴィがブレーメン市から表彰されたというニュースが伝わってきた。ドイツ・カンマーフィルの首席指揮者に就任してちょうど20年。長年の功績が認められた形であった。
表彰は当然であろう。ドイツ・カンマーフィルの実力を向上させ、その名は世界にとどろき、幅広く認知されるまでになったのだから。
ブレーメンには「ブレーメン・フィル」というオーケストラがあるが、少なくとも日本のファンはほとんど知らない。ドイツ・カンマーフィルこそがブレーメンの代表であり、ドイツの中でも屈指を誇る室内オーケストラなのだ。
(もっとも、ライトなファンの中には、ドイツ・カンマーフィルがブレーメンのオーケストラだということを知らない人も若干いそうではある(笑)。)
私自身も、パーヴォとドイツ・カンマーの組み合わせは最高だと思っている。
パーヴォはN響の首席指揮者としても活躍し、その他にもパリ管やhr響、シンシナティ響、コンセルトヘボウ管などとも来日公演を行っているが、総合的に一番良い印象があるのはドイツ・カンマーフィルとの演奏なのだ。
この日の演奏も実に冴えていた。
決してコテコテの古楽スタイルではないが、必要に応じてノンヴィヴラートなどの奏法を取り入れ、少編成でいかに最大限の効果を生み出すかを常に目指していると思われる。
その効果は抜群で、大きな説得力があり、古典作品の演奏において、思わず「そう! これこそが最適、正解!」と頷いてしまうのであった。
・・・と、ヤルヴィ&ドイツ・カンマーフィルのことを褒めておいてナンだが・・・実はこの日のハイライトは、樫本大進が弾いたコンチェルトであった。
御存知のとおり、代役出演。ヒラリー・ハーンが病気療養のため来日できなくなり、急遽のピンチヒッターとなった。
世界的な名ヴァイオリニストであるH・ハーンの穴を埋められる奏者は数少ない。ハーンの来日を楽しみにしていたファンも多いだろうし、普通ならがっかり、主催者にとっても大きな痛手だったはずだ。
ところが、その大きな穴を埋めて、なおかつ余りある救世主が見つかった。誰あろう、樫本大進である。
泣く子も黙るベルリン・フィルのコンサートマスターだが、同時に超一流ソリスト。類まれなる才能と実力を遺憾なく発揮し、ヴァイオリン協奏曲の頂点とも言われるベートーヴェンを完璧に弾いた。実にお見事。お客さんは大満足したことだろう。
残念ながら、今回の来日ツアーでハーンが弾く予定のすべての日程をカヴァーすることは出来なかった。この日を含めた2公演が大進クンで、残りの3公演はマリア・ドゥエニャスというスペインのヴァイオリニストが務めることになったわけだが、チケットを買った人たちにとっては、正直に言っちゃうと、明暗が分かれたんじゃないかなーと思う。
決して彼女を下に見ているわけではないし、もしかしたら新たな才能の発掘となるかもしれないが、要するに、日本人にとって樫本大進はスターだということ。こればかりは如何ともし難い事実。