指揮 アレクサンドル・ラザレフ
ラザレフの首席指揮者としてのラスト公演と銘打たれている。ならば是が非でも行かなければと思ってチケットを買ったが、何の事はない、新シーズンからは桂冠指揮者兼芸術顧問として引き続き来日してくれるとのこと。焦る必要はなかったのだな。
ラザレフが振る日フィルの公演にこうして足を運ぶのは、音楽性もさることながら、彼の微笑ましいステージマナーを眺めたいというのが大きい。
「ほら、音楽って素敵でしょう? 作曲家って偉大でしょう? こんなにも素晴らしい演奏をしてくれたのは、私ではなく、他ならぬオーケストラの皆さんですよ! どうか彼らに惜しみなく拍手をしてあげてくださいね!」
ラザレフは身振り手振りで聴衆にそう訴える。大真面目に。
そして、この日も出ました、演奏が終わり音が鳴り終わっても「静寂」という音楽を指揮し続ける姿。
ラザレフさん、あなた最高。本当に最高。
タコ15番は、なんとラザレフ、初演のリハに立ち会っているのだとか。きっと特別な思いがあるだろうし、曲の解釈に関しては本家本流の筋金入りだと自負していることだろう。
なんとなく聴き手としてそうした推測や先入観があるせいか、この日の演奏は非常に理路整然として見通しが明るいという印象。迷宮に入り込んだような謎めいた曲だというのに。
かくしてグラズノフの魅力の発信は、今秋以降も続いていく。