ミュンヘン二日目。移動がないので、終日ゆっくり過ごすことが出来る。
午前中に訪れたのは、レーンバッハハウス美術館。
ここも久しぶりだったが、いつの間にか建物が改装されていた。かつては個人邸宅風だった。現在は一部がビルディングになっている。すっかり近代美術館っぽくなった。
レーンバッハハウスからすぐ近いケーニッヒプラッツの一角に、最近新たな施設が誕生した。
名称はNSドキュメンテーション・ツェントルム・ミュンヘン。今回、必ず行こうと思っていた見学ポイントだ。
NSとは略称で、国家社会主義のこと。すなわち、あの「ナチ」の資料館である。
若きヒトラーはウィーンで夢破れた後に政治に目覚め、ここミュンヘンで旗揚げし、ナチスを立ち上げた。その後、組織がケーニッヒプラッツにあった貴族の屋敷を買い取り、活動拠点にした。ヒトラーからすれば、ルートヴィッヒ1世が区画整備したこの場所に自分のオフィスを構えることは、念願の一つであり、野望への第一歩だったことだろう。
第二次大戦では当然のことながら空爆のターゲットとなり、建物は完全に崩壊喪失。戦後70年を経て、その跡地に資料館が創設された。もちろん、二度と過ちを繰り返さないため、決して忘れてはいけないための負の遺産として。
誤解を恐れずに言うと、私はナチスに少なからずの興味がある。
もちろん、思想に共感しているわけではない。そんなことは決してない。それだけははっきりさせておく。
なぜ、一人の人間のあまりにも急進的な思想が、多くのドイツ国民を熱狂させるまでに至ったのか。いったい何がそうさせたのか。あの熱狂はいったいなんだったのか。
私の関心はそこだ。
たいていの独裁国家では、独裁者の強権で国民に恐怖を植え付け、それによって統制し、抑えつける。
ところが、ナチズムは違う。
第一次世界大戦の敗戦の苦しみから国民を解放させたからということは、歴史の知識として知っている。
だが、ここミュンヘンのNS資料館は有料(5ユーロ)。
その価値はあると思う。
すべての展示パネルにドイツ語に加えて英語が併記されている。
簡単な会話程度の語学力しかない私は、つい写真ばかり見入ってしまうが、それでも十分に満足した。