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2016/9/9 新日本フィル

指揮  上岡敏之
 
 
上岡敏之新日本フィル音楽監督としてのシーズンがスタートした。挨拶代わりのプログラムは、その力量を問うのに相応しいシュトラウスの重厚な交響詩二つ。否が応でも期待が高まった。
 
ところが・・・。
まるで肩透かしを食わせるかのような、静かな立ち上がり。ゴージャス、絢爛とは対極の素朴さ。音楽を聴いているのではなく、あたかも本を読んでいるかのような落ち着き払った佇まいに、正直言って、絶句。
盛り上がらない・・・。
シュトラウスにこういうアプローチがあるのかと目からうろこ。
 
聴き手の衝動を抑えられ、もどかしい感じで唖然としていると、静かな朗読の中からやがて聞こえてくるものがあった。
「詩」である。音楽のストーリーとでも言おうか。
音の中から現れる言葉。シュトラウスの語り。
上岡さんが狙っていたのは、これだったのか・・・。
 
英雄の生涯も、まったく同様だった。
 
シュトラウスは言葉やストーリーをすべてオーケストレーションで再生させることが出来る天才なのに、この指揮者はその音を再び言葉とストーリーに戻す作業を行っている。これは、驚き以外の何物でもない。
 
かくして二冊の本を読み終え、ぼーっとしていたら、突然「音」が鳴った。
アンコール、サロメ「7つのヴェールの踊り」であった。
この公演で当初期待していたシュトラウスの官能性。ここで出してくるとは・・・。
 
この指揮者、やっぱり曲者。現時点で、果たしてどこに向かおうとしているのか、全然分からない。
しかし、それはつまり「これからのお楽しみ」ということなのか。今後の過程を注視せざるをえない、そんな挨拶代わりの公演であった。