クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

2023/3/25 新日本フィル

2023年3月25日   新日本フィルハーモニー交響楽団    すみだトリフォニーホール
指揮  上岡敏之
ブルックナー  交響曲第8番


自分が行ったコンサートのデータベースで調べてみたら、ブル8を日本人の指揮で聴いたのは、朝比奈隆以来だった。
演奏会に足を運ぶにあたって「日本人より外国人」みたいなこだわりはないつもりだが、こうしてデータを見ると、偏重は一目瞭然。
もしかしたら、自分の中に「この作品に関しては、教会の鐘が響く石畳の街で育った指揮者で聴きたい」という意識が働くのかもしれない。

上岡さんは、日本人でありながら、ドイツを肌で知っている数少ない指揮者である。拠点が完全にあっちなのだ。そんな彼が指揮する演奏を聴くと、他の日本で活動している指揮者とは明らかに違う感性を感じるのである。

その上岡さんがブルックナーの孤高の作品を振る。
本公演は新日本フィルの創立50周年記念の特別演奏会で、しかも、元々は2020年9月の定期演奏会で演奏されるはずだったもの。特別演奏会のプログラム選定にあたり聴衆にアンケートを取ったところ、圧倒的にリクエストが多かった作品だという。
一公演限り、満を持しての演奏だ。

「ドイツを肌で知っていて、拠点が完全にあっちの人」だからかどうかは分からないが、タクトを振った瞬間、空気が変わった。あたかも外来オーケストラを聴いているかのような感覚。厚くて重みのある響き、叙情的な佇まい、冬枯れの景色・・・。
明らかに新日本フィルサウンドが変わっている。

上岡さんはこの音を作れるのだ。これが出来るんだ。

だとするなら、コロナや本人の体調不良などで来日できず、最後尻切れトンボのように新日本フィル音楽監督任期を終えてしまったことが惜しまれる。これが出来るのなら、契約更新しても良かったのではないか。

それとも、特別演奏会、一公演限り、満を持しての演奏だからこそ到達した頂点だったというわけか。
いずれにしても、一期一会の名演。素晴らしかった。