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2023/8/31 読響

2023年8月31日   読売日本交響楽団   サントリーホール
指揮  上岡敏之
ブルックナー  交響曲第8番


本公演の当初の指揮者はローター・ツァグロセクだった。病気によりキャンセルとなり、代替で上岡さんに変更となった。この一公演のために、急遽ドイツから駆けつけてくれたそうである。

ツァグロセクの降板は個人的に残念だ。私が前回彼の指揮による公演を聴いたのは、2006年12月のN響。本当に久しぶりのはずだったのだ。

代替の上岡さんについて、指揮者本人に特段の不満は無い。
が、今年3月、新日本フィルで本公演と同じプログラムのブル8を聴いている。その意味で、新鮮味、ワクワク感が削がれたことは否めない。
ただ、この時の新日本フィルとの演奏は、実に素晴らしかった。あの感動をもう一度、ということなら、喜び勇んで会場に足を運ぼうと思う。


その上岡さんのブル8。
前回の新日本フィルの演奏を克明に記憶しているわけではないが、作品に対する解釈、基本的なアプローチは、ほぼ同じとみた。

同じ指揮者が同じ曲を振ったからといって、すべて同じになるとは全く限らない。何と言ってもオーケストラが違う。
指揮者というのは、オーケストラからのアウトプットに応じ、柔軟に対処していくというのは、普通によくあることである。

ところが、今回の上岡さんは、一切の揺るぎがなかった。おそらく、作品に対する掌握、確信が絶対的に強固だったと思われる。完全に手中に収めてあった。

テンポや強弱の設定、アゴーギクなどは、相変わらず独特。良く言えば個性的だが、クセの強い引き出し方には、もしかしたら「あざとい」という意見が出るかもしれない。
だが、これこそが上岡さんのブルックナーなのだ。彼が導いた最終結論なのだ。
好きか嫌いかで論じるのは大いに結構。だが、一体誰が「悪い」と断じることが出来るだろう。逆に、これを音楽の多様性として受け入れることが出来るかどうか、聴き手側の度量が問われることになりそうだ。

もっとも、そんなことをいちいち心配しなくても、作品の崇高さがすべてを超越し、解釈云々や演奏技術、好みなんか、あっという間に浄化させてしまうわけであるが・・。ブルックナー、偉大なり。


今回、私はP席に座ったことで、指揮者の表情をつぶさに観察することができた。
上岡さん、音楽に完全に没入していて、何だか鬼神のようだった。ぞっとするくらい恐懼に溢れていた。

いよいよそういう境地に到達してきたか、上岡敏之・・。