指揮 アレクサンドル・ラザレフ
上原彩子(ピアノ)
ラフマニノフ ピアノ協奏曲第3番
そんな中、どちらかというと線の細い上原彩子が過去においてチャイコフスキー国際コンクールを制覇しているというのは、やや意外ではある。
だが、彼女自身がそこを目指していないのだから、これは仕方がない。彼女は彼女なりに考えた結論として、均整の取れた繊細なラフマニノフ像へのアプローチを試みたのだ。この演奏を楽しむためには、我々が刷り込まれている既成のラフマニノフ演奏のイメージをいったん白紙にしなければならない。
ただし、それでもなお残念だったのは、彼女の一生懸命さは伝わりつつも、伴奏を務めたラザレフの解釈とはまるで異なっていたことだ。特に最終楽章は危うくて、聴いていてヒヤヒヤした。スリリングなライブと言えば聞こえがいいが・・・。
それに比べてメインの交響曲の素晴らしかったこと!指揮者の思惑どおりの音楽がストレートに展開された結果、会場はまさにラザレフの独演会に。説得力があるので、聴いていてすっきり爽快。いやあラザレフ最高!!
私は日フィルのコンサートに頻繁に行っているわけではないが、いざ行ってみると「オケの技術的未熟さにがっかり」ということが以前はけっこうあった。
最近はすっかり首席指揮者であるラザレフのコンサートくらいしか行かなくなっているが、だいぶ改善されているような気がする。ラザレフが鍛え上げた成果であろうか。この日もチャイコも、そうした技術的な問題でハラハラすることはほとんどなく、ラザレフの躍動する音楽に100%集中することが出来た。
実はまだ聴いていないのだが、首席客演指揮者のピエタリ・インキネンとのコンビもかなり良いという噂ではないか。
ついにいよいよ日フィルの時代がやってくるのであろうか!?
そんな前途洋洋の日フィルに一つだけ文句を言いたい。それはチケット。