指揮・ピアノ ダニエル・バレンボイム
公演のチラシにさ。「あなたは歴史の目撃者となる。」って書いてあるわけ。
かなり大げさなキャッチコピーだと思うわな、普通は。
でもね・・・。
「それ、マジ!!」
今、東京で、凄いことが起きている。空前絶後の演奏が連日連夜繰り広げられている。私は三日連続で叩きのめされた。
断言しよう。これは絶対に聴いておいた方がいい。決して聴き逃してはいけないコンサートだ。
とにかく、一にも二にもバレンボイムだ。彼にひれ伏すしかない。この演奏を聴いたら、彼がどれほど天才かつ偉大であるかが分かる。
あまりにも巨大なのだ。指揮者に漲るエネルギーが。ここぞの場面で放つ一撃の破壊力が。
私は見えた。無色であるはずの空気が見えた。バレンボイムのタクトによって、空気が動き、揺れ、流れを作り、うねりを作る。私にはその様が見えた。
渦を巻いた空気が、やがて聴いている者の耳に届く。聴覚を刺激しているのは音ではない。熱だ。指揮者の音楽に対する情熱が耳に伝わり、鼓膜を振動させるのだ。
P席からまざまざと見つめたバレンボイムの鋭い視線。スコアを完全掌握する透徹の眼力。オーケストラ奏者全員を音楽のコアに引きずり込む吸引力。
これほどまでに有無を言わせぬほどの圧倒的説得力を示すカリスマ指揮者が、今の時代にまだ生き残っていたとは・・・信じられない。
絶大なる指揮者の生き様と天才の極意を体感できる貴重なチャンス、残された回数は私はあと2・・・。