クラシック、オペラの粋を極める!

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ハープ奏者井上美江子さん

1月23日に行った読響特別演奏会。会場で配られたプログラム「月間オーケストラ1月号」の特集記事に、パラパラとめくっていた手が思わず止まった。
当月号の特集は「ハープ」。そこにハープ奏者井上美江子さんのインタビュー記事が写真付きで掲載されていた。
 
井上美江子さん・・・。あの時の・・・。
 
記事の本人の話によると、読響のステージに乗るようになって20年だという。しかし、正式な団員ではない。ハープが必要な公演の時のみ出演する臨時契約団員のような形態。従って毎回のプログラムに掲載される団員名簿にはその名がない。だから私は今までずっと気が付かなかった・・・。
 
ハープ奏者の場合、リサイタルやコンチェルトなどのソロ活動を行い、録音してアルバムを出せるような知名度の高い演奏家はごくごく僅か。かといって、プロオーケストラに正式団員としての枠が確保されているとは限らない。プロとしてやっていくのは相当大変なのだと思う。
 
そうした厳しい環境の中にきっといるに違いないとあるハープ奏者のことを、私は時々ふと思い出していた。
「そういえば今どうしてるのかなあ・・。プロ奏者として頑張っているのかなあ・・。」
 
今からかれこれ30年以上も前の昔話である。私が高校三年生の時だった。
埼玉県の某県立高校吹奏楽部。この年の定期演奏会のメインプログラムとして採り上げたのは、華麗なるオーケストレーションで有名なリムスキー=コルサコフの名曲「シェヘラザード」。この大作を吹奏楽バージョンで全曲演奏した。ラッパ吹きの隊長として、それは高校生活の集大成と言えるものであった。
 
御存知のとおり、この曲には絶対に不可欠なソロパートがある。ヴァイオリンとハープである。
ブラスの楽器やピアノなどで代用する手もあったが、我々はどうしてもオリジナルにこだわりたかった。
ヴァイオリンはOBに演奏出来る人がいてその人に依頼することが出来た。だが、当たり前だがハープ奏者はそう簡単には見つからない。
顧問の音楽の先生のつてとコネを利用して助っ人を探し、ようやく賛助出演を引き受けてくれたのは、当時桐朋学園大学の現役音大生。それが井上美江子さんであった。
 
彼女が初めてわが校に来て一緒に練習してくれた時の事を、今も鮮明に覚えている。
合奏だというのに、ハープの旋律の箇所になると、我々部員どもは自分が演奏することさえ忘れ、お姉様の演奏にうっとりと聴き入ってしまうのだ。
「ポロロローン」というアルペジオが入っただけで、部員どもの「おおーーっっ!!!!」というどよめきと歓声があがった。ブラスバンドでは体験したことのない魅惑の響きに思わず体がのけぞる。その後、みんなで顔を見合わせて「すっげ~!これがハープの音だぜ。」と溜息をついた。もう合奏どころではないのである。指揮をする顧問の先生も苦笑。ハープの井上さんも苦笑。今思い出しても、あれは衝撃の瞬間であり、かつ楽しいひとときだった。
 
演奏会当日。ゲネプロを終え、開演前のひととき。部の副部長だった私は、部長と一緒に二人でハープ奏者の控室に行き、ドアをノックした。
「井上さんが賛助出演してくれたおかげで、素晴らしいコンサートになりそうです。本当にありがとうございました。で、一つお願いがあります。是非サインしてもらえませんか?」
 
快くOKしてもらい、公演プログラムの余白部分に控えめな可愛いサインをゲット。
 
調子に乗った私は、話を続ける。
「どうかプロの演奏家になってくださいね。そして活躍してくださいね。心から祈っています。そうなったら、本日いただいたサインはきっと価値が出ることでしょう。ですから、おねがいしますよー!(笑)。」
 
井上さん「うーん・・・わかりました(笑)。頑張りましょう。」
 
彼女のサイン入りプログラムは、30年経った今もちゃんと保管してある。それがこれ。
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私との約束をしっかり果たし(笑)、演奏家として御活躍の井上さん。ありがとうございます。
それにしても青春の思い出が蘇った。いやー懐かしい。ちょっと感動した。
 
※右側のヴァイオリンのイラストは何の関係もありません。