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2023/1/29 周防亮介 無伴奏ヴァイオリン・リサイタル

2023年1月29日   周防亮介 無伴奏ヴァイオリン・リサイタル   サントリーホール
バッハ  無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番
パガニーニ  24の奇想曲


間違いなくヴァイオリン奏者にとってチャレンジングなプログラム。作品を読み込む力はもちろんのこと、技術的な確信、体力的自信も備わっていないと、プロであっても二の足を踏むのではなかろうか。
周防さんはそれをやった。
私がこの公演に足を運んだのは、そうした大胆なプログラムに興味を覚えたから。周防さんの演奏を聴きたいというより、一人の若い演奏家がこういうプログラムに果敢に挑戦する姿、自信の裏付けとなるテクニック、そしてその成果を見届けたいと思ったから。


パガニーニカプリース。学生時代、この楽譜を見たことがあったが、クラクラと目眩がした。プロ奏者にとっても、この曲は厄介だと思う。弾くだけでも十分に難しい(手が小さいと、運指ポジションさえ取れない)が、超絶技巧を要求されながら、それだけに追われていると、やがて聴き手は徐々に飽き、退屈してくる。華麗な技巧に魅せられるのは、最初の方だけ。
技巧の先にある音楽的な何かを見つけ出せるかどうか。これが肝心なのだ。

周防さんは、その点をちゃんとお見通しだ。単なる技術の披露で終わらせない。旋律の抑揚を大切にし、歌うように奏でる。速いパッセージの中にもちょっとした工夫や変化を施す。もちろん、前提となる高度な技術は盤石で、難度をそれほど感じさせない。これには感心した。

プログラム・ノートにも書いてあった「周防亮介の今でしかできない挑戦」、「周防亮介という演奏家の今」。それは確かに存在していたと思う。

これで今回の目的は、ひとまず達成したはず。しかし、今後更なるステップアップで「ネクスト」、「次の今」を探し求めることになるのだろう。

トランスジェンダーに対する世間の理解も、徐々に浸透しつつある時代。もはやそれが特別なのではなく、普通の人間として、純粋に一人の演奏家として、真価が問われていくことになろう。だからこそ、「彼女」のますますの躍進に期待したい。