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2021/12/17 兵庫芸術文化センター管(豊嶋泰嗣デビュー35周年特別演奏会)

2021年12月17日  兵庫芸術文化センター管弦楽団特別演奏会  兵庫県立芸術文化センター
《デビュー35周年 豊嶋泰嗣 バルトークを弾く!》
指揮  広上淳一
豊嶋泰嗣(ヴァイオリン、ヴィオラ
バルトーク  ヴァイオリン協奏曲第1番、ヴィオラ協奏曲
モーツァルト  後宮からの逃走序曲
バルトーク  ヴァイオリン協奏曲第2番


ピアニストの場合、プロとしての演奏活動は、基本ソロである。
これが弦楽器や管楽器の奏者だと、「オーケストラプレーヤー」という選択肢が生まれてくる。特に、実力的に抜きん出ている優秀なヴァイオリン奏者だったら、更に「コンサートマスター」という花形リーダーの道も出てくる。

ソリストでやっていくとオーケストラの合奏に参加することが出来ないが(コンチェルトを除く)、コンマスならオーケストラをやりつつ、ソロも室内楽も並行してできる。活動の幅は格段に広がるだろう。あえて難があるとすれば、プロオーケストラの数は限定されているので、コンマスの枠が非常に狭き門だということか。

本公演のソリスト豊嶋泰嗣さんは、そうした人生の道を切り開き、自らの演奏家ストーリーを描いてきた。
桐朋学園大卒業後、すぐに新日本フィルコンサートマスターに就任。その後もサイトウ・キネン・オーケストラ九州交響楽団、そしてこの兵庫芸術文化センター管などのコンマスも歴任してきた豊嶋氏。まさに日本のコンマスの第一人者であり、なおかつ屈指のヴァイオリニストの一人と言えよう。
 
そんな彼がデビュー35周年記念としてPAC管をバックにコンチェルトを弾く公演。
プログラムはびっくり仰天、なんとバルトークのヴァイオリンとヴィオラのコンチェルト3曲を一挙に弾いてしまうという驚愕の離れ業だ。

このぶっ飛んだスペシャル企画に私は惹かれ、はるばる埼玉から聴きにやってきた。
バルトーク作品を一挙に聴けるという魅力もさることながら、一人の優秀なコンサートマスターというヴァイオリニストの果敢なチャレンジをも目の当たりにすることも出来、味わえた興奮は大きい。

私は2005年にシュロモ・ミンツが東響の定期公演でバルトークのヴァイオリン協奏曲第2番とヴィオラ協奏曲の2曲を連続で弾いたのを聴いた。その時も「へー、すごいや」と思ったものだが、それが今回は3曲なのである。
いやいや、めっちゃ大変でしょう。
そもそもヴァイオリンとヴィオラの掛け持ち自体が、大変な作業なのである。トランペットとホルンの両方を演奏するようなもの。感覚は全然違う。この日の指揮者広上さんもマイクで「大谷翔平みたいなもの」と紹介していた。ある意味そのとおりだと思う。
 
通して聴いてみると、集中力が漲った渾身の演奏。緊張していた感は多少見受けられたが、3曲すべてが完成度の高い立派な演奏であった。
特に、ヴィオラの朗々とした響きは本当に美しくて魅力的だったし、難曲コンチェルト2番は鬼気迫るかのような壮絶さが表現されていて、本当に素晴らしかった。改めて豊嶋さんの実力に唸ったと同時に、このヴァイオリン奏者の生き様、哲学、信念、すべてを見せつけられたようで、圧倒された。
 
この日、ハープ奏者の吉野直子さんが友情出演。指揮の広上さん共々長年の音楽同士だそうで、公演に華を添えていた。

まあとにかく、すごいもの聴かせていただきました。大変お疲れ様。