指揮 ジョナサン・ノット
エマニュエル・アックス(ピアノ)
バッハ/ストコフスキー 甘き死よ来たれ
R・シュトラウス ブルレスケ
曲目を見ただけでは、プログラムに秘められた意味が全然理解出来なかった。会場入りした時も、既にカチカチと音を鳴らしている100台のメトロノームを見て、「こんなのは音楽じゃねえ。オレは認めないぞ。ただの音じゃんか。」と溜息をついた。
だが、やがて演奏を通じてそこに秘められた意味を理解すると、言葉を失った。
「諧謔的で悲観的で、皮肉が込められた人生。そこに時が刻まれ、やがて死を迎え、終焉となる・・・。」
一見するとバラバラな各曲が、一貫したテーマによって繋がれ、シンメトリカルに進行していく・・・。
このコンサートで我々は「死」に向き合わざるをえないと悟った時、怖くなり、いたたまれなくなり、もはや音楽を楽しむ境地ではいられなくなった。
折しも同時多発テロ事件があり、私たちは生への希望を否定された。
また、個人的に肉親を看取った経験があり、徐々に消えてゆくメトロノームのリズムが、風前の灯の命を呆然と見つめる恐ろしさと重なって、心が張り裂けそうになった。
演奏の感想なんか思い付きもしないし、語りたくもない。頼むから、音楽を聴いて絶望と恐怖を催すようなコンサートは、これが最初で最後にしてもらいたい。