クラシック、オペラの粋を極める!

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ラハティ響 シベリウス交響曲チクルス

オッコ・カム指揮  ラハティ交響楽団   東京オペラシティコンサートホール
シベリウス生誕150年記念シベリウス交響曲サイクル
2015年11月26日  交響曲第1番、第2番
2015年11月27日  交響曲第3番、ヴァイオリン協奏曲、第4番
2015年11月29日  交響曲第5番、第6番、第7番
ベッテリ・イーヴォネン(ヴァイオリン)
 
 
 ひと月前にはフィンランド放送響が来日してシベリウスを演奏したし、更にはラハティ響の名を飛躍的に高めたヴァンスカがまったくの同時期に来日して読響を振っている。シベリウスファンは「さて、どれに行こうか」と思わず迷ってしまうところだが、私はというと、このカム指揮ラハティ響をとても楽しみにしていた。
 
 オッコ・カムと言えば、第1回カラヤン指揮者コンクールの覇者として一躍名を馳せた人物。帝王カラヤンのおメガネに適った俊英のはずだったが、その後のワールドワイドな活躍はというと、それほどパッとしない。なんだかんだ言ってもシベリウススペシャリスト的な扱いである。
 もっとも、エサ・ペッカ・サロネンを除けば、ベルグルンド、ヴァンスカ、オラモ、サラステ、インキネンなど、みんな北欧ローカル色からイマイチ抜け出せない。かの国の出身の宿命なのだろうか。
 
 何度となく来日を果たしているカムだが、私は超久しぶりで、およそ30年ぶり。ひょろっとした長身のイメージだったが、そうでもなく、しかも椅子に座っての指揮はすっかり丸みを帯びてしまった様子。
 音楽もそうした指揮ぶりそのもので、全体的に柔らかく、温かい。とっても素朴なのだ。
 ヴァンスカと繰り広げたシベリウスがもっとがっちりして峻厳さを醸し出していたので、やはりこれは「現在のカムの音楽」なのだろう。
 ただし、公演を重ね、作品番号が上がっていくに連れて、音楽全体の景色がみるみると変わっていく様子を感じることができたのは収穫だった。もちろん、後期になるにつれて作品は徐々に抽象的になっていくので、印象が変化していくのはある意味当然なのだが、そうした作風を大切にし、素材そのもので勝負する方向性に感心した。
 
 個人的に驚嘆したのは、コンチェルトを弾いたイーヴォネン。まったくその名を知らなかったが、相当のヴィルトゥオーゾで、舌を巻いた。
 
 それにしても、今回の一連の公演はとても盛況だった。これだけ客席側に熱気がある公演は久しぶりである。スタンディングオベーションの嵐。なぜローカルオケのラハティ響にこれだけのお客さんが入る?この熱気はいったい何?
 まあ盛り上がるのは良い事なので、詮索はやめるとしますか。