クラシック、オペラの粋を極める!

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2014/7/6 スイス・ロマンド管弦楽団

2014年7月6日  スイス・ロマンド管弦楽団   横浜みなとみらいホール
指揮  山田和樹
樫本大進(ヴァイオリン)
チャイコフスキー  ヴァイオリン協奏曲
 
 
 本場欧州で一定のポジションを確保している日本人指揮者の晴れ姿を二日続けて目の当たりにする誇らしさ。片やリヨンの歌劇場監督、片やジュネーブのオケの首席客演指揮者。共に名門である。同時期に来日し、フランス語圏で、距離的にもそれほど離れていないというのは、奇遇の妙だ。
 
 注目の指揮者、山田和樹の快進撃は目覚ましい。
 有名なブザンソン国際指揮者コンクール優勝者だが、このコンクールを制覇している日本人は実はゴロゴロいて、別に珍しくも何ともない。中には、誰とは言わんが、せっかくの輝かしい経歴を有しているのにイマイチ活躍度に乏しいと言わざるをえない人も。コンクール優勝者だからと言って、世界のオーケストラがポジションとステータスを黙って差し出してくれるほど甘い世界ではないわけだ。
 
 そうしたことを考慮すると、ヤマカズくんはやっぱりすごい。もう既にパリ管やフィルハーモニア管、チェコ・フィルなどへの客演を果たし、そしてスイス・ロマンド管弦楽団の首席客演指揮者就任である。しかもその契約は更新されたということだ。実力は本物と言っていいだろう。
(余談だが、ヤマカズというと、我々及びもう少し上の世代は、1960年代から80年代にかけて活躍した日本指揮者界の御大:故山田一雄氏を思い出す。)
 
その片鱗はこの日メインプロではないコンチェルトにおいて早くも発揮された。
所詮は伴奏なのだ。しかもソリストはあの大進クンなのだ。裏方役に徹しても良さそうである。
もちろん本人だってその役割は十分心得ていたことだろう。決してでしゃばることはしなかった。
ただ、ソリストを引き立てるために、ほんの少し色を添える工夫をしていただけ。
 
その添えられた色のなんと鮮烈なことか!
ヴァイオリンソロの音楽にマッチする最善の音型をオケの各パートからピックアップするその加減のなんと絶妙なことか!
 
山田和樹は見えているのだ。スコアの中のどの音型が重要なのかが。
そして分かっているのだ。時に潜んで埋もれている音型の抽出がどれほどの新鮮さとインパクトをもたらすかが。
そうしたことをすべて掌握した上で、あとは「ソロのために何が最善か、オケ伴において何が出来るか」という音楽づくりを徹底的に実践していたというわけだ。
 
 効果は絶大。何十回と聴いて知り尽くしているチャイ・コンをこの日改めて認識した。この曲はオーケストラとソロヴァイオリンの「協奏」曲だったのである。
 
 メインは幻想。変幻的で、まるで魔が潜んでいるかのように一筋縄でいかない込み入った曲だが、そこは上記のとおりスコアから重要な音型を引き出す能力に長けた指揮者。面白くないはずがない。
 案の定、次から次へと斬新な旋律と音色が飛び交ってくる。
 感心なのは、オケ奏者たちがこの若い指揮者に嬉々として従っていることだ。この指揮者に付いて行けば何か新しい発見を導き出してくれる。それに気が付いたからこそ、才能を信用し、首席客演指揮者に迎え入れたのだろう。
 クラシック音楽界に頼もしい日本人の若者がまた一人出現したことを、私は大いに喜びたい。
 
 それにしても、こんなにも聴いていてワクワクし、「ウッホー!」と叫びたくなるようなコンサートは久しぶりだった。