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2014/6/12 読響

2014年6月12日  読売日本交響楽団定期演奏会   サントリーホール
指揮  パオロ・カリニャーニ
合唱  新国立劇場合唱団
並河寿美(ソプラノ)、清水華澄(メゾ・ソプラノ)、岡田尚之(テノール)、妻屋秀和(バス)
ヴェルディ  レクイエム
 
 
 読響の名誉指揮者であるR・フリューベック・デ・ブルゴスの訃報が届いたちょうどそのタイミングで、死者を弔うための鎮魂歌「レクイエム」の公演が催された。偶然の巡り合わせとはいえ、運命と絆を感じずにはいられない。しかも以前の読響公演において、体調不良でキャンセルしたフリューベック氏の代役としてカリニャーニが登壇したこともあったそうだ。
 この日の演奏は天国へと旅立ったフリューベック氏に捧げられることになっていた。男性陣だけでなく、ソプラノとメゾのソリストや女声合唱の方々も、服装が黒系で統一されていた。演奏者全員で喪を表していたことは間違いない。
 また、演奏終了後、指揮者カリニャーニはタクトをすぐに降ろさず、かなり長い静止時間を取った。会場は美しい静寂に包まれた。これも、氏に対して黙祷を捧げたということだろう。
 
 一方で、カリニャーニの音楽づくりに関して言えば、そうした悲しみや感傷性からは一歩距離を置いているのが一目瞭然だった。
 彼の指揮は一見すると熱血的なのだが、ダイナミックなタクトについ目を奪われて、もしそれを単純に「イタリア人らしい情熱」などといった一言で片付けてしまうと、本質を捉え損なうかもしれない。この男、熱そうに見えて、実は非常に冷静沈着である。
 響きの透徹性や構築性を追求し、常に音楽の基軸に目を光らせている。仕上がりは驚くほどシャープかつクリア。嗚咽のない、泣かないレクイエム。ある意味、異色とも言えるだろう。
 
ベースとなっているのは指揮者の聡明な分析力。
スコアに何が書かれているのか、歌詞に何が書かれているのか。
それを表現するためにどう演奏したら良いか、どうタクトを振るべきか。
音量、テンポ、バランス、奏法、歌の発音、これらすべてに綿密な計算を働かせている。
曲のクライマックス「リベラ・メ」でソロ・ソプラノ歌手をわざわざ移動させて、位置を変えて歌わせたことなどは端的な例だ。とにかくクレバーな指揮者である。
 
 新国立劇場合唱団は相変わらず完成度が高い。合わせることにおいて一分の隙もない。そういう意味では全然イタリアっぽくない。(イタリアはとにかくまとまりがない)
 にもかかわらず、イタリア人であるカリニャーニから全幅の信頼が寄せられているというのがなんだかとっても面白い。カリニャーニだけでなく、常任指揮者のカンブルランも含め、今やすっかり読響のベストパートナー合唱団だ。
 4人のソロの中では、メゾの清水さんの染み入るような歌声が魅力的だった。