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2023/5/26 マーラー・フェスティバル5 交響曲第8番「千人」

2023年5月26日   マーラー・フェスティバル Ⅴ  (会場:ゲヴァントハウス)
指揮  アンドリス・ネルソンス
管弦楽  ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団
合唱  MDR放送合唱団、ライプツィヒ歌劇場合唱団、ゲヴァントハウス合唱団、ゲヴァントハウス少年少女合唱団
ブリット・トーネ・ミュラーツ(ソプラノ)、ジャックリン・ワーグナー(ソプラノ)、ニコラ・ヒッレブラント(ソプラノ)、ゲルヒルト・ロンベルガー(メゾ・ソプラノ)、リオバ・ブラウン(メゾ・ソプラノ)、ベンヤミン・ブルンス(テノール)、アドリアン・エレート(バリトン)、ゲオルク・ツェッペンヘルト(バス)
マーラー  交響曲第8番 千人の交響曲


18日間開催されたマーラー・フェスティバルのフィナーレを飾るのは、まさに有終の美にふさわしい大曲、「千人」交響曲。この曲だけで3公演あって、私が聴いたのは初日。

「復活」と「千人」、この2つの公演が、私の今回の旅行のハイライトだ。コロナのせいでずっと上演が困難だった大規模合唱付きの作品。特に「千人」は、モヤモヤしたコロナ期間を吹き飛ばす決定打となる、そう信じて臨んだ公演。ソリストも、実にいい歌手が集まった。


冒頭、「Veni, veni creator spiritus!」との大合唱が響き、ものすごい音圧が皮膚に届いた瞬間、身体にビリビリと電流が走った。眩みを起こしそうなほどの圧巻の大迫力。
マーラーメンゲルベルクに宛てたという「大宇宙が響き始める様子を想像してください。それは、もはや人間の声ではなく、運行する惑星であり、太陽なのです」の言葉が、脳裏で鐘のごとく打ち鳴らされる。音楽体験上、最大級の陶酔と高揚・・・。


ネルソンスのタクトは、「復活」の時よりも、あるいはこれまでに聴いたどのネルソンスよりも、動きが少なかった。巨大な編成を前にして、細かい振りでは全体としてまとまらないという目算であろうか。
その分、両手を高く広げ、あたかもアンテナのように張って巨大なサウンドを受け止める。例えとして良いかどうかは分からないが、あたかも横綱土俵入りの不知火型のような万全の構えに見えた。

おそらくリハ段階では、ディティールの部分において、ネルソンスならではの解釈を織り込んでいたはず。
だが、私には、曲の壮大さが、指揮者の音楽作りにおける独創部分を完全に凌駕しちゃったように聴こえた。
大音響に包まれながら、私は心の中で叫ぶ。
「指揮者の解釈なんて、いい。ただ音楽を鳴らし、響かせて、このままオレを打ちのめしてくれー!」。

なんたって、「運行する惑星であり、太陽」なのだからね。


終演。望んだ通り打ちのめされ、燃えカスとなった後、私はボソッと呟いた。

マーラー、なんという狂気の作曲家であろうか・・・。