クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

二刀流の奏者

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 昨年、日本のプロ野球ではとてつもない才能を持った新人が話題となった。ピッチャーと打者の二刀流に挑戦した日本ハムの大谷投手だ。どちらか一つを極めるだけでも大変なのに、なおかつ高卒ルーキーだというのに、一年を通してほぼ一軍で活躍した。
 成績はさておき、これは本当にスゴいことだ。なぜなら、少なからずの人たち(口うるさい評論家を含む)が「出来るわけがない。プロはそんなにあまくない。」と否定していたにも関わらず、敢然とチャレンジし、二刀流が決して不可能なことではないことをはっきりと証明したのだから。
 
 実はクラシック音楽の世界にも、二刀流で活躍する奏者がいる。ヴァイオリニストであり、ピアニストであるドイツの女流奏者ユリア・フィッシャーだ。本業はヴァイオリンだが、8回の国際コンクール制覇のうちの3回がピアノだというのだから、その実力が単なるお遊び程度ではないことは一目瞭然。
 
 つい先日、彼女が一晩でヴァイオリン協奏曲(サン=サーンスの3番)とピアノ協奏曲(グリーク)のソロを演奏した公演の録画映像(フランクフルト・アルテ・オーパーでのライブ)を視聴した。彼女のことはもちろん以前からその噂を聞いていたが、実演には接したことがなく、今回初めて聴いた。
 
 まず、ヴァイオリンの腕前はかなりの一級品であるとみた。テクニックは盤石、天性のひらめき、豊かな響き、実に申し分ない。まだ若いが貫禄も十分で、力強さも兼ね備えている。音色はとても美しく、自発的に飛び跳ねているかのような躍動感が感じられる。
 
 次にピアノについてであるが、正直な感想を言ってしまうと、「まあ、これくらい弾く人は世界にはゴマンといるな。」だった。(スミマセン)
 だからと言って、別に才能がないと言っているわけではない。むしろヴァイオリニストでありながら、ゴマンといる世界的ピアニストにも伍して譲らずであることを率直に評価すべきであろう。
 
 何よりも驚嘆すべきことは、一公演でヴァイオリンとピアノの両方のコンチェルト演奏をやってのけたことだ。使う筋肉も違うから肉体的に大変だろうし、音楽的アプローチも異なるから頭の回転を相当早くしないと、こなせないはずである。
 それを可能にするのは、永年の練習で培った経験、そして楽器演奏そのものを超越した音楽素養の豊かさということだろう。つまり、演奏家というより「音楽家」としての才能と器量が大きいのである。
 聞くところによると、ドイツ史上最年少の若干23歳でフランクフルトの音楽大学教授に就任したらしいが、それが何よりも音楽家として大成している証拠と言えそうだ。
 
 機会があれば、彼女の演奏を是非生で聴きたいものである。別に二刀流公演でなくてもいい。ヴァイオリンだけでいいから。
 過去に来日経験はある。2003年バイエルン放送響の来日公演にソリスト同行していたが、私は同日に他公演を優先し、機会を逃してしまった。その後、N響定期公演に招聘されたことがあったが、キャンセル変更になってしまった。
 
 是非また呼んでほしいアーティストだ。写真のとおり、ご容姿だってなかなかお美しいじゃありませんか(笑)。